「大好きな映画の中に自分を見出だして。夢を実現させて」映画大好きポンポさん 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
大好きな映画の中に自分を見出だして。夢を実現させて
公開時はビジュアルから萌えキャラ風の女の子が主演の映画製作現場を題材にしたアニメーション映画…くらいにしか漠然と知らず。
しかし、絶賛の声、声、声!
いや~確かに面白かった!
テンポ良く、笑えて、苦楽や熱いものも込み上げて。
そしてポンポさんの命令通り、尺は約90分!
映画会社“ペーターゼンフィルム”でプロデューサーのアシスタントとして働く青年、ジーン。
性格はうじうじ、おどおど、どん臭い。が、映画への知識、愛は誰にも負けない。
今撮影しているのは、巨大化したタコやカニに水着姿が眩しいセクシー美女が銃をブッ放して戦うB級モンパニ・アクション『マリーン』。
監督はB級映画を得意とするコルベット、主演は人気美人女優ミスティア。
何だかB級映画専門の某映画会社みたいな…。
ジーンは働きながら必死にお勉強。
そこへ、来ったぞ~!
映画製作現場にふらりと紛れ込んだ女の子。
皆と親しげ。誰かの子…?
でも、皆がですます調。
見た目は子供、実は彼女、
このペーターゼンフィルムの超敏腕プロデューサー。
手掛けているのはB級映画ばかりだが、しっかりと観客を満足させてくれるもの。
さらに、監督や俳優を見出だす目利き。
あのB級映画の某帝王を彷彿させる。
とある理由から、手掛ける作品の尺は必ず90分。
その理由となった祖父。
祖父は、もう引退した伝説の映画プロデューサー。
才能は受け継がれた。彼女に。
ポンポさん!
プロデューサーとしては超やり手だが、性格は陽気。ジーンは彼女のアシスタントで、振り回される毎日…。
ある日ジーンは、『マリーン』の予告編を任される。
映画の魅力をほんの僅かな時間で伝えなきゃいけないプレッシャー。でも、編集が楽しい!
なかなかユニークな予告編となり、これがポンポさんのお眼鏡に掛かった事から…。
ポンポさんの新作脚本『マイスター』。
B級映画が多いポンポさんにしては珍しいヒューマン・ドラマ。
世界的指揮者、ダルベール。が、行き詰まり、失墜。赴いたスイスの大自然の地で、一人の少女リリーと出会い…。
…という、筋は単純だが、魅力的な二人の登場人物、引き込まれるもの。
さらにジーンは一番好きなシーンを脚本から挙げる。
予告編の巧さ、脚本の深い読み解きから、ジーンはポンポさんが直々書いた脚本の監督にまさかまさかの大抜擢される事に。
え~~~~~ッ!? 僕が監督デビュー!?
ポンポさんの鶴の一声。
もうやるっきゃない。
さらにジーンの大プレッシャーとなったのは、ダルベール役。
6度のニャカデミー賞に輝き、今回10年ぶりに映画カムバックを果たすレジェンド名優、マーティン・ブラドッグ。(マーロン・ブランド×長らく引退状態のジャック・ニコルソンみたいな…?)
肝心のもう一人の主演。リリー役は…?
そこへ現れた女の子。
彼女を見て、ジーンは身体中に電撃が走ったようなビビッと感じる。
そこに、“リリー”がいた。
ポンポさんも彼女を当て書きして脚本を書いたという。
田舎町出身。ジーンと同じく映画好き。
映画好きにしてくれたおばあちゃんとの約束を果たそうと、映画女優になる事が夢に。
幾つものバイトをしながらオーディション受けるも、全敗。
今回もポンポさんから「地味!」と一度は落とされたが、まさかの再採用…!
夢への扉が開いた。
本作はジーンと彼女=ナタリーの奮闘サクセス・ストーリーでもある。
一行はまずロケでスイスへ。
向かう飛行機内に、銀行マンの青年。ジーンを知ってる風…。後の伏線。
スイスの大自然で遂にジーン初監督の撮影が始まった。超プレッシャー。
マーティン、さすがの名演!
しかし驚くべきは、ナタリー。本当にそこに、リリーがいた。
順調な撮影だったが、ヤギ小屋倒壊や天候悪化などトラブルも。
が、ジーンが機転を利かして撮影出来た。
皆がアイデアを出して、脚本に無いシーンも撮影。
文字通り、映画は皆で作る。
そして、この作品の要。ジーンも挙げた一番好きなシーンの撮影。
歌っているリリーが振り向き、ダルベールが音楽への情熱を取り戻す。
撮れた! このシーンを撮る為に、ここに来た。
この映画は成功するとも確信している。
どんな映画にも心に残る名演、ワンシーンがある。
今思い付いたのは…
『生きる』で公園のブランコに乗る志村喬。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』で圧倒的インパクトのダニエル・デイ=ルイス。
『2001年宇宙の旅』のクラシック音楽に乗せての宇宙遊泳。
『スター・ウォーズ EP4』で二つの赤い太陽を見つめるルーク。
『殺人の追憶』の衝撃の“普通”のラストシーン。
『ゴジラ』で山の頂きから顔を現すゴジラ。
…もう挙げたらキリがない。
それぞれがすでに名作だが、その秀でた演技、シーンがさらに伝説にさせる。
撮影は終了。
が、映画はまだ完成していない。と言うか、監督の仕事はこれから。
そう、編集。
映画製作の格言。映画を殺すも、生かすも、編集次第。
楽しい楽しい編集の時間!…の筈だった。
莫大な撮影フィルム。それをポンポさん命令で90分に収めなければいけない。
最初はいい感じで繋いでいたが…、
初監督。あのシーンこのシーン、愛着あり、切れない。
それに、ストーリー上はみ出したりもしない。
でも、どうやっても2時間を超えてしまう。
まだまだ切らないと。
何処を…?
また最初から。何度も何度もやり直し。
次第にノイローゼ気味に…。
映画製作題材の映画は“撮影”が多い。
本作も前半は撮影だが、後半は編集にピックアップされているのが珍しい。
スターが演技する華やかな撮影と比べ、一見地味な編集。時には一年以上も編集室に籠ってフィルムと苦闘する監督や編集マンもいるという。
しかしここで本当に、映画は“生まれる”。
そして本作の面白い所は、ジーンの死ぬほどの編集作業に、自らの人生、映画への思い、
さらには『マイスター』のストーリー=ダルベールの再起も絡めて、これが実に巧い!
映像表現も見事!
ジーンにとっては、その映画の中に自分はいるか。
ダルベールにとっては、その音楽の中にアリアはあるか。
本作、メモしたくなるような言葉も多々。これから映画製作を目指す若者たちには是非…いや、絶対に見て欲しい!
ポンポさんの祖父ペーターゼンの助言を得、編集作業を再開したジーン。
気付く。足りない事を。つまり、
追加撮影。
それをやるという事は、携わったキャスト/スタッフをもう一度集めるという事。
その調製や何よりお金。
それがどんなに大変な事か。
それでもどうしても撮りたいシーンがある!
困った奴…。けど、その心意気や良し!
監督はこれくらいワガママでないと。黒澤明や宮崎駿やスタンリー・キューブリックなんて…。
でも、融資を何処から…?
思わぬ人物が協力を申し出てくる。
ニャリウッド銀行勤めの青年、アラン。
実は、ハイスクール時代のジーンの同級生。
ハイスクール時代、決して友達ではなかった。
アランは彼女や友達に囲まれ青春を謳歌し、ジーンは映画が友達だけの暗い青春時代。
そんなジーンをどん引きすらしていた。
銀行マンとなった今、仕事に行き詰まり。社会人となって、自分の無能さを知る。
そんな時、ジーンと再会。映画監督となって夢を実現させた彼に感嘆する。
仕事を辞めようとしていた時、ジーンの映画の融資の話を知る。
尽力する。
彼は夢を実現させた。
その夢を潰させたくない。
人の夢の為にあるのが、銀行。
リスクはあるかもしれない。が、
今の自分に出来るのはこれだけ。
自分も夢にーーー。
多少気になった点も。
幾ら何でもニャカデミー賞に輝いたり、都合のいい展開が多い。(ジーン監督、次回作大丈夫…?)
ファンタジーみたいに本当に悪い奴も不在。銀行の上司も最初はヤな奴だったが、協力してくれたし。
それと、理由はあるにせよ90分にやたらと拘るポンポさん。長い映画が氾濫する昨今、尺が短い作品は有難いが(例えばつい最近観たばかりの『ヴェノム~』とか)、ジーンの言う長い映画に浸っていたいというのも分かる。つまらない映画だったら苦痛だけど…。
どうしても90分に収まり切れず2時間になって、でもポンポさんがそれを気に入って90分以上の映画も…でも良かったんじゃないかな。
でも、あのラストの台詞を言わせたかったのかな…?
劇中さながら、平尾隆之監督やスタッフの素晴らしい仕事ぶり。
生き生きとした魅力的なキャラ。生を吹き込んだボイス・キャスト。
『マイスター』試写を見終えたポンポさんと同じ心情。
この映画、大好きだ。
今晩は
大先輩に対して、恐縮至極なのですが・・。
今作、私は大変面白く鑑賞したのですが。
映画の尺に対する、ポンポさんの意見には、少し違和感を感じました。
拙レビューには記載しましたが・・。
名作と言われる映画は、その面白さと深さ故に、3時間近くの作品が多いと思っています。
近作で言えば、「ドライブ・マイ・カー」でしょうか。三時間近い尺ですが、私は余りの面白さに体感2時間でした。
何が言いたいかと言うと、優れた脚本と演技で構成された映画は、尺の長さを感じさせないという事です。では、又。返信不要です。
> どんな映画にも心に残る名演、ワンシーンがある。
> 今思い付いたのは…
その通りですが… 即座にこれだけのシーンを挙げられるとは、さすがは近大さんですね! 俺も、映画の見方をちょっと考えなきゃ。「観終わった瞬間の感情をレビューに書こう」とは意識していたんだけど、そうか、今観た映画で一番印象的だったシーンを意識するってのも、映画っぽくていいな、