「今回のバニングの行動原理は内向き」エンド・オブ・ステイツ うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
今回のバニングの行動原理は内向き
シリーズも3作目となれば、それなりに「約束事」が出来てくるものだと思う。例えば「イピカイエ・マザーファッカー」「アイル・ビー・バック」なんて、きめ台詞があったり、意中の彼女にラストで必ずフラれるとか。
このシリーズで言えば、主人公のマイク・バニングの昇進こそがそれにあたるのだろう。前作までの活躍を認められ、大統領を警護する要職に任命される人事が発動し、何となくそんな空気を察して、やんわり辞退する気でいることが冒頭語られる。自分の健康や、家族との時間を考えれば、今のハードな仕事は無理と考えている。そうしているうちに事件が起き、一瞬で最悪の事態に巻き込まれるという、(言葉を選ばずに言うなら)本当に語られ尽くしたほどよくある展開。
大統領が暗殺されかかり、その犯人として全米指名手配されるマイクは、危機を乗り越え、逃亡を続けながら真相に迫っていく。
アクションを得意とする俳優なら、一度はこんな役演じているものだ。特にトム・クルーズなんて何度もこのパターンで窮地を乗り越えている。キャラクターは毎回違っても、陥るピンチは似たような展開なのだ。
さらに言えば、この展開には必ず裏で糸を引く黒幕がいて、意外な人物が正体を隠して主人公を追い詰める。『逃亡者』ものとでも言おうか。
見ていて、新味がない展開はげんなりさせられる。ニック・ノルティ演じるマイクの父親がいいアクセントになっているものの、これもストーリーとしてはどこかで見たことのある展開で、ほとんど予測できる。まあ、予告編に出ているので知ってはいたが。
なので見るべきは、3度続けて同じキャラクターを演じるジェラルド・バトラーの敢えてパターンを踏襲しないアクションにフォーカスされるし、キャラクターの成長や変化を加えてくる味付けにある。今回ナイフを使った格闘シークエンスはすごい緊張感を醸し出している。まず「シャキーン!」みたいな不自然な音がしないこと。敢えて音楽を流さないこと。CGを使っていないようなので、一発撮りの立ち回りが複雑な動きを要求され、その迫力が伝わってくること。など、演出が冴えわたる。
引退を考えているという設定なのもあって、何となく年寄りじみているバトラーだが、今回もきっちり脱ぐ。マッチョなボディーは健在ということか。少しふっくらしているように見えるのだけれど。顔のしわも増えたし。
単独で見てもまあ、料金分は楽しめる映画だとは思うし、シリーズを追いかけているファンとしては、これからもマイク・バニングの活躍を期待したい。ただし、今回は、ホワイトハウスを占拠したテロだとか、ロンドンを機能不全にする同時多発テロだとか、そういう分かりやすい敵じゃなくて、「ハメられた」敵から身を守り、追われながらも大統領を救うという、内向きの戦いになっている。
興行成績からして、どうやらマイク・バニングは今回の旅が最後になりそうだ。
2019.11.18