「ほぼブルガリア映画」エンド・オブ・ステイツ よねさんの映画レビュー(感想・評価)
ほぼブルガリア映画
前2作で大規模テロと戦った大統領付シークレットサービスのマイク・バニングはいよいよ身体もボロボロ、時折激痛に襲われ投薬でギリギリ耐えている状態であることを誰にも相談出来ずにいた。ワシントンを離れて少し釣りに勤しみたいというトランブル大統領を護衛についたマイクはまた激痛に見舞われ大統領のそばを離れたところに正体不明のドローンが大量に出現、一緒に護衛に当たっていたマイクの同僚を次々に爆撃。急いで大統領のもとに駆けつけたマイクは水中に飛び込んで一命を取り留めるが、救急病院で目覚めたマイクは大統領が昏睡状態にあること、そして自身に大統領暗殺未遂の容疑がかけられていることを知る。
前作の監督ババク・ナジャフィという抜擢もビックリでしたが今回の監督リック・ローマン・ウォーも全くノーマークの抜擢でさらにビックリ。続編のたびに無名の監督に限られた予算を与える試みだとしたらなかなか奇妙な取組み。冒頭からの展開は『逃亡者』的な鉄板ネタに青海苔のごとくドローンをふりかけただけみたいな話なので油断しました。今時自分名義の海外口座に大金が振り込まれたとか現場から頭髪見つかったとかだけで大統領の側近を100%疑うのだろうかとか、ドローンの製造元を洗ったりしないのだろうかみたいなツッコミも内心やってはいましたが、中盤でマイクの父親クレイが登場する辺りから一作目に先祖返りしたかのような軽快さを取り戻し、終盤にかけてのハイテンションかつグロテスクな銃撃戦はシリーズ屈指の凄惨さでビックリ・・・PG12ですけど大丈夫なのでしょうか。ビル内の攻防を上から俯瞰する神の視点、どエゲツないほどに銃弾を叩き込み手榴弾で人体を木っ端微塵するバイオレント描写は『ザ・レイド』から始まったインドネシアの忖度の欠片もないバイオレンスの流れを汲むもので冒頭のレトロ感をなかったことにしていて痛快。クライマックスの死闘と結末もそんなアジアの潮流なかりせば実現しなかったもの。香港ノワールを堪能し『ザ・レイド』の登場に涙した世代には何よりの贈り物となりました。
ちなみに本作、エンドクレジット中に実にくだらないユルいギャグがブチ込まれていますのでそれも堪能しておかないと損です。同じくジェラルド・バトラー主演の『ハンター・キラー』もそうでしたが、本作もクレジットに流れてくる名前がだいたいVで終わるほぼブルガリア映画。大規模ロケの代わりに安いセット撮影と気合の入ったCGで痛快なアクションを作り込んでみせるブルガリア魂みたいなものもまた昨今のB級アクションのトレンドになっている気がします。お客さんが10人しかいなかったのが残念ですが楽しかったです。