「散らかし放題」ワンダーウォール 劇場版 odeoonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
散らかし放題
NHK京都放送局制作による「京都発地域ドラマ」として放送されたテレビドラマの劇場版。廃寮の危機に瀕した京都の歴史ある学生寮「近衛寮」を舞台に、老朽化による建て替えを巡る大学側と寮生側との対立を描いた青春物語。
まるでドキュメンタリーの様だがそれもその筈、モデルは実際の京都大学の吉田寮、大正2年(1913)に建てられた最古の学生寮、伝統的に吉田寮自治会が自治寮としての運営を実践してきたが、大学側は大学の管理権を主張、その運営形態は長年の対立点であった。大学側は老朽化による安全性の問題を理由に、寮生に対して退去と建物の明け渡しを求め訴訟を提起していた。長年の対立を経て、2025年8月、大阪高等裁判所にて、大学側が代替宿舎の確保や改修後の再入寮(条件付き)を認め、寮生側は2026年3月末までに建物を明け渡すことなどを条件とする和解が成立した。この和解により、1980年代から続いた現棟の処遇を巡る大学と寮自治会の対立は法的に決着し、大学側による改修工事が実施されることとなった。
映画はフィクションなので京宮大学の学生寮、近衛寮となっている。
冒頭からベルリンの壁やトランプによるメキシコ国境の壁の建築などが取り上げられ、壁が分断の象徴とされていました。映画では寮生たちが交渉に訪れる学生課の受付に白い壁が設けられ、対立の象徴に描かれましたね。寮再建計画は老朽化による安全性確保とされているが裏には大学の経済的理由があるというのも、寮生の立場では遺憾と思えるも今時には道理にも思えますし、前任の学生部長は良き理解者だったこともあり、善悪の対立構図で描くのは相応しくないですね。
寮生たちの生活の描き方も麻雀、飲食、喫煙、部屋は散らかし放題と褒められたものじゃありません。
大学寮の実態は、運営形態(大学直営か民間委託か)によって費用や生活ルールが大きく異なりますが、大学直営の古い寮では月額数千円〜2万円程度と抑えられ家具・家電が備え付けられていることが多いため、引っ越し費用や購入費を大幅に節約できるなど貧困家庭の学生には奨学金並みに恩恵があるのに、その問題は描かれていないのはどうかと思いました。
