「【”思想信条の違い”を、相手を思い、敬い、そして赦す事で乗り越えていく崇高さを描き出した作品。永く記憶に残るだろう作品でもある。】」2人のローマ教皇 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”思想信条の違い”を、相手を思い、敬い、そして赦す事で乗り越えていく崇高さを描き出した作品。永く記憶に残るだろう作品でもある。】
ー今作品が素晴らしいのは、ローマ教皇を聖人ではなく、世俗の垢を拭いきれない一人の悩める人間として描いているところである。-
冒頭、2005年のコンクラーベの場面から物語は始まる。
ここでは、3回目の投票で教皇(ベネディクト16世)に選出された(白い煙・・)、ラッツィンガー枢機卿(アンソニー・ホプキンス:保守派:ドイツ)を始め、ベルゴリオ枢機卿(ジョナサン・プライス:改革派:アルゼンチン)らが、同じカトリック教徒ではあるが、思想信条が違う事がさり気無く描かれる。
そして時は過ぎ、ベネディクト16世に”ある事”が起きる一方、ベルゴリオ枢機卿は辞職を申し出るが、逆にベネディクト16世からバチカンへ来るように連絡を受ける。
―この、タイムラグの妙味が後半明かされる。-
ーベネディクト16世(以下、教皇)とベルゴリオ枢機卿の教皇の別荘での二人きりの会話ー
ベルゴリオ枢機卿の若き日の自らの告解のシーン。”神は全てお見通しだ・・”そして、教皇がピアノでスナメリの曲を弾くシーンで若き日の恋を思い出す・・。
”イエズス会ジョーク” 祈りながら喫煙するのは許されないが、喫煙しながら祈るのは許される・・など、楽し気な会話も交わされる。
(■この部分、あるレビューの方からの鋭い指摘で修正しました・・、すいません・・。)
そして、教皇の口から出た言葉。”いつも独り・・”
”ある出来事”のため、急遽バチカンへ戻る二人。
そして、”私を戒めて欲しい”と潔く身を引こうとする教皇。教皇は終身制だと言って引き留めるベルゴリオに”君なら教会を改革できる”と言う教皇。
ベルゴリオは苦々しい、過去のアルゼンチン軍事独裁体制時に自らが取った行動を告解するが、教皇はベルゴリオの頭に手を乗せ、“赦し”を与える。
ーベルゴリオの1983年軍事政権崩壊時の失権から1998年、彼が多くの民衆に法話を聴かせるシーンが描かれる・・。彼が時間をかけ、罪を償ってきた事が分かる。ー
そして、逆に教皇が”ある出来事”を宮殿の”涙の間”でベルゴリオに告解する。ベルゴリオは、驚き、叱責するが、矢張り教皇を“赦す”。
-街中のピザを二人で並んで食べるシーンが良い。それまで、食事は独りだった教皇がピザにかぶりついている・・。ー
そして、二人でゆっくりとお互いの手を肩と腰に回し、ステップを踏んだ後(ベルゴリオは恥ずかしそう・・)別れる。
2013年、教皇が大広間で重々しく何か喋っている姿がベルゴリオの部屋のTVに映し出される。
愉しそうにベルゴリオは言う。”教皇は言いにくい事はラテン語で言うんだ・・”
ーもはや、二人は思想信条を乗越え、お互いの立場、考えが分かる友人であることが良く分かる。-
そして、ベルゴリオはコンクラーベで新たな教皇になる。彼が教皇になった際、慣例の服装をやんわりと断り、民衆の前で”最初に”言った言葉。
”我が名誉教皇、ベネディクト16世に祈りを”
2014年、ワールドカップ決勝(ドイツVSアルゼンチン)を二人で並んでピザを食べながら、TVで一喜一憂しながら観戦するシーンも良い。
(絶妙に上手い、脚本だなあ・・。)
<清廉だが、人間味溢れる二人の教皇が交わす言葉の数々が心に沁み渡る。生きる上での”金言”満載の映画である。>