「狡猾な男と純情な女」Red U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
狡猾な男と純情な女
どおにもやるせない不倫の話。
なんか赤裸々なベッドシーンが話題に上がってたけど、キスシーンの方が印象的だった。
女性の目線からだとどお映るのだろうか?
塔子に感情移入するのだろうか?
それとも嫌悪感を抱くのだろうか?
なかなかにセンセーショナルな幕切れではあったけど、時間軸が掴みにくかったなあ。
婚姻って契約に縛られた女性の話にも見えなくはないんだが…訴えかけるとこは他にあるような気がしてならない。
障害のある恋程燃えるなんて話あって、だからこそ不倫はのめり込むなんて話にもなるのだが、どおやらこの作品において、それは逆説のような位置付けで…婚姻という枷を引きずってまで貫く程の気持ちがあるから不倫なんて関係が存在する。ってとこだろうか。
元々、不倫してた過去のある2人がまた不倫を始める。男に家庭があり女は独りだった。
どおいった関係かは描かれないのだが、おそらくならば女の方は止められない気持ちを持っていたのだと思われる。だからこその再発かと思うのだけど…。
問題は男のシチュエーションだ。
彼は離婚して癌を患ってる。
…独りで死んでく寂しさもあったんじゃないか?
それを上書きする為の行為なんじゃないか。
男の本音は愛情に由来してないように思う。
女の純情と男のズルさ、みたいなとこだろうか。
そんな事を考えると色々しっくりくる。
最後まで女は信じていたかったんだろうし、信じていたかったからこそ家庭には戻れないのだろうし。
勘違いで人生を棒に振るような…そんな十字架は背負っていけないよなぁ。なんて思っちゃう。
いずれにせよ、純愛だろうと誤解だろうと、その先に祝福は待ってないって結末だった。
本能に起因する愛というものを秩序と理性で縛り続ける婚姻という契約。
…恋愛結婚なんて言葉もあるけど、今の状況を必死に正当化する為に使わざるを得ない言葉であるならば、それはとても不幸な事で牢獄にいるのと変わらないのであろう。
作品的にはかなりスローな印象で、ある意味退屈だった。というのも…結局は他人事なので。
どんだけドラマチックな内容であっても他山の石なのである。なるべく共感を得られるように丁寧に作られてもいるが、そもそもが実生活において関与出来ない事柄であり…つまりは感情移入のしがいがない。
「昼顔」を見た時はもっと引き気味だったから、今回は妻夫木氏に傾倒したのかもしれない。
結構面白かったのが柄本兄のポジション。
恋愛感情の絡まない異性ってポジションで、女が興味のない男にとる態度っていう側面があるわけなんだけども…あんなボリュームでいいのかしら?
彼を使って出来る事はたくさんあるように思う。
不倫なんてものは結局はSEXに終始するのだと思ってる。好きであるならば求めるのは当然の行為だし、好きが加速していけば不安にもなって、それをかき消す為にも行うのであろうし。契約が結べないからこそ実感を求めたりもするのだと思う。
今回のSEXも雄弁であった。
日本人はそろそろSEX=快楽って方程式から解脱した方がいいと思う。
まあ、そんな事に思いが至る程、今回の2人は熱演であった。
ただ、まあ作品のテーマとしては複雑で個人の価値観に左右されるとこが多大だろうなと思う。
聞いてみたいのは「この原作のどこに魅力を感じて映像化に踏み切ったんですか?」である。
小説ならばその全てを自らに投影できたりもするのだけれど、映像となればある種の強制を強いられる。
没入感が妨げられるというか…そお考えると、この題材は実に厄介な代物であると思うのだ。
何を描きだしたかったのだろうか…。
◾️追記
ワンコさんのレビューに問いかけの答えが載ってた。なるほどと霧が晴れたような気分だ。
学の薄い俺には分からない筈だと至極納得。