「評判に偽りなし」シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション トーリさんの映画レビュー(感想・評価)
評判に偽りなし
原作を知らない人でも普通に楽しめ、もちろん原作ファンなら
納得できる出来になっている。キャラクターの外見や性格が
ほぼ原作に忠実であり、コメディとアクションの詰め込み方も
嫌味なくいい具合に流れている。
ネットでの評判の多くが語っているように、原作愛がしっかり
あってこその構成だと思う。
女ったらしで美女からの依頼しか受けない冴羽獠だが、今作は
そうではないのに受けざるを得ない状況に仕立てられており、
冴羽獠のパートナーである槇村香がヒロインのポジションで
扱われている。フランス発の実写化1作目ということで、
原作の初期の部分にフォーカスしちゃんと冴羽獠と槇村香の
関係性がわかるようにしているのが素晴らしい(回想で登場
する槇村兄が個人的には最高の再現度だと思った)。
ネタバレは避けるが設定次第でサブヒロインの美女を全編に
出す事もできたはずだがそれをせず、獠にとって香が特別で
ある(が決して素直にならない)点をよく描けている。
1作目でそこをちゃんと押さえているから、これでもし2作
目以降が作られるなら今度はゲストヒロインとその依頼を軸
に話をまわして、野上冴子や海坊主などのキャラの活躍の場
を増やすこともアリで、原作シティーハンターと同じ定番展開
がいくらでも作り出せるので非常に巧いと思った。
終盤のとあるピンチからの脱出あたりは若干説明不足かなと
感じた部分はあったが、全体の評価に影響するほどではない。
日本語吹き替えプラスBGMも日本向けローカライズだとの
事だが、フランス公開の元バージョンで観てもおそらく何ら
違和感は感じなかったと思う。ローカライズ版はもちろん
「さすがわかってるな」と言えるもので、声の配役についても
主人公役が神谷明さんから交代する点について前評判ではやはり
いくつかの意見は散見されたが、山寺宏一さん、沢城みゆきさん
はじめ定評あるプロの声優さん達だけあって何ら問題なく、
むしろアニメ当時からかなりのインターバルを経て実写化を
観るに際し、新鮮な印象をもって受け入れることが出来たと思う。
1993年公開の香港版は「シティーハンターの実写化」というより
「シティーハンターを題材にしてジャッキー・チェンや後藤久美子
が出演している話題作」という印象が強かったが、本作は純粋に
「シティーハンターの実写化」として受け入れられる。
日本の漫画やアニメの実写化はいまだに当たり外れの差が激しい中
この作品はかなりの成功例で観て損はない作品だと思う。