「ハシゴになった犬」THE POOL ザ・プール　因果さんの映画レビュー（感想・評価）

閑散とした場所にあるだだっ広いプール。高さは6メートル。この単純だが魅力的な皿の上にナンプラー風味のアクシデントを次から次へと盛り付けていく。干からびる水、届かない声、上から降ってきたワニ、窒息死寸前の彼女、没収されるハシゴ。俺は国王か何かなのかとさえと錯覚しそうになるほどの歓待ぶりに満足を超えて食傷の感すら覚える。もういいよ、と思った矢先に次の料理が、その次が、その次の次が、その次の次の次が…

ここではあの「陸のサメ」であるワニさえも食前酒・食後酒程度の存在感しかない。メインディッシュはもちろん犬だ。序盤からプールの外でワンワン吠えて時折有能なんだか無能なんだかよくわからないムーブで思わせぶりに芳香を放っていたこのムク犬は、最後の最後で立派すぎる活け造りとなって我々の前に差し出される。タイ料理で活け造り！？という驚愕と、でも美味いんだよな…という背徳が混じりあってなんともいえない陶酔が生まれる。タイの倫理観だからこそ成し得た偉業といえる。動物を飼ってる人はあんま見ない方がいいと思うけど…