「稀代の天才を描くのは不可能かもしれない」HOKUSAI たまるるさんの映画レビュー(感想・評価)
稀代の天才を描くのは不可能かもしれない
子供の頃に確か、ゴールデン洋画劇場特別編として「北斎漫画」を観た。覚えているのは巨大タコのエロいシーンと、雨が降ると北斎が走り出すシーンくらいで、実はストーリーとかは全然覚えていない。でもそれをきっかけとして、私はその後浮世絵なるものに興味を持つようになり、美術館で浮世絵展等があると必ず足を運ぶようになった。なので今回実は結構期待していた。
映画製作の際には、恐らく2時間程度という、いわゆる目安のようなものがあると思うのだけれど、それに縛られるとやはりエピソードを端折る必要が生じるだろうし、またそれぞれのエピソードと物語の脈絡に整合性を持たせるのも難しくなってしまう。今作はチャプター分けをすることによって物語を飛躍させていたけれども、例えばコバルトブルーのくだりとか風に吹かれる描写のくだりあたりは取って付けたような印象をどうしても覚えてしまう。この作品は3時間を超えるようなボリュームを持たせても良かったのではなかろうか。例えとして適当かどうかは分からないけれど、山崎豊子の分厚い小説を読破した後や、ゴットファーザー3部作を観終えた時の、どっと押し寄せる心地よい疲労感のようなものを持たせることもできたかも知れない。
全編を通して、色彩の美しさが素晴らしかった。特に吉原の遊郭の猥雑な色使いと怪談話をしている時のロウソクを覆う青い和紙が印象的だった。花魁の麻雪も神秘的ながらも淫靡な魅力があって良かった。
本編終了後のエンドロールの背景が黒一色だったのが残念でならない。限られた時間なのだから作中のエピソードのモチーフになった作品を紹介するような演出があっても良かったのではなかろうか。
全く持って余談なんだけれど「あさま〜♪」と子供が唄うシーンで、「男たちの挽歌」の少年少女合唱団が唄うシーンを思い出した。
コメントありがとうございます!
ですよね〜。伏線かと思いきや何にもなりませんでしたもんね笑
確かに、3時間を超えるボリュームを持たせても良かったのかもしれませんね。2時間あっても物足りない気がしましたし。