「できることをする」ジョジョ・ラビット バスト・ラーさんの映画レビュー(感想・評価)
できることをする
イマジナリー総統に励まされながら立派な兵士になることを夢見るジョジョ少年から見た戦争
あまり戦争映画ぽくなくて見やすい
子供部屋には贔屓のスポーツ選手のようにちょび髭のおじさんのポスターが飾られ、ユーゲントの訓練もサマーキャンプのよう、序盤はまるっきりジュブナイルの方法論で進む
でもそこかしこに暴力の気配は漂っていてラストのアメリカ軍侵攻のシーンに効いてくる
この映画が他の戦争映画とかなり違うのは単にコメディ色強めなだけじゃなくて戦争の悲惨さを表現する方法として人の悪意をコントラストに使っていないことだと思う(うさぎを殺すことを命令してくる指導役はどっちかと言うとスタンドバイミーとかの歳上いじめっ子枠だしゲシュタポが来るシーンもあっさり)負の側面を極力削ぎ落としているからこそ、どこにでもいる普通の人々が戦争という地獄のようなシステムに呑み込まれている悲しさがある
知人の祖父に戦争中捕虜だった体験を伺ったことがあり(場を設けたとかではなく何かのひょうしにちょっとした昔話なような感じ)
「隊の皆敗けると思ってたからな~すぐ降伏したわ、バターとか食わせてもらって行った時より太って帰ってきたわ」みたいなことを笑いを交えて話して頂いた顔が、「ボクたち間違ってたのかもな、もうナチスじゃいられない」と敗走しながら、それでもさして悲惨さもなくつぶやくヨーキーと驚くほど重なる
大河的超大作にはもしかすると出せないような手に触れられるようなリアリティを自分には感じられた