「花より団子」乱反射 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
花より団子
冒頭、「事故当日」というテロップにいきなり重くのしかかる不穏。
不運な事故、防ぎようのない事故。でもそれ本当?
やり場のない怒りの向ける先を求めて独自に動き出す父親と妻、知らぬ間に子供を殺していた人々を描いた作品。
フラストレーション満載。
ほんとバカみたいな世の中の仕組み、めんどくさすぎる仕事、板挟みのしんどさ、人の話を聞かないクレームは公害、家庭内の小さなイザコザ。
色々な人が出てくる中で、誰もが経験する日々のストレスをどストレートに見せてくる。
リアルな苛立ちが身体に響いてしんどい。
バタフライ効果のように様々な要因が重なって起こった事故。
責任逃れの言い訳も謝罪の言葉もただただ神経を逆なでするだけ。
知れば知るほど世の中への失望や絶望が募る様子に、私はどうしたらいいのか分からなくなった。
側から観ていて彼らを責めるのは簡単だけど、後ろめたい物事を何一つしたことの無い人なんている?
やってはいけないと知っている物事を破ったことの無い人なんている?
やらなければならない物事をサボったことの無い人なんている?
誰が悪いかと言うと全員悪いけど、ただの悪でもない。
一方的に責め立てるだけでは収められない現実味を感じた。
みんな自分中心の世界。
最後の患者は私かなと思っている。
いつどこで誰を殺していることやら。
責任も面倒も負いたくないしけど、もし身の回りに取り返しのつかない事故が起きたら、誰かを責められずにはいられないでしょう。
ジレンマだらけだな。
とりあえず今目の前にある仕事はきちんとこなしていかないと、と思わず背筋が伸びる。
夫婦の形と関係性がとても良かった。
沈みすぎない。責めない。好き同士。
無責任に近い「大丈夫」の中身がどんどん変わって、最後の方はそれを聞くたびに泣けてしまう。
「仕方ない」で終わらせることは絶対にできないけど、何をしても誰を殺しても消えてしまったものは帰ってこない。
二人の咀嚼音と目付きの強さに覚悟と生命力を感じた。
花より団子、貪り食べて生きてこ。