「駆け足感は否めないが」シン・ウルトラマン 森林熊さんの映画レビュー(感想・評価)
駆け足感は否めないが
かなり楽しめた。各種オマージュがいい。怪獣を禍威獣、科特隊を禍特対など無理矢理感はあるが面白く変更している。禍威獣は既に討伐されたものも多いが、ネロンガ、ガボラと登場して来る。しかし2体だけである。中盤以降は外星人ザラブとメフィラスのやり取りがメインとなることもあり、弱腰外交な日本政府の情けない姿が描写されるなどより禍威獣をもう少し見たかった感はある。
113分という短い上映時間故に仕方なくはあるのだが、どうしても神永というかウルトラマンのキャラが掴めなかったのは残念なところ。神永が子供を庇って命を落とし、そのことから人間というものにウルトラマンが興味を持つまではいいのだが、ゾーフィと対峙してまで守ろうとするほどなのか?という部分が引っ掛かる。禍特対の面々もキャラはいいのだが、その魅力を伝えきるにはやはり尺が足りてない感がある。神永とバディを組む浅見もウルトラマンの正体を知ってから交流していくことになるので、絆を深めるという感じが無い。そもそもザラブのせいで神永の正体がバレて雲隠れするので、交流するシーンも希薄なのだが。もう正体バレるの?と思ってしまったが、動画をネット公開するという手法は今風らしくていい。
ウルトラマンの最後といえばお決まりゼットンなのだが、ゾーフィが人間を地球ごと破壊するために用意した生物兵器という設定になっているのは面白かったし、1兆度の熱球を採用しているところもポイントだ。太陽系が一瞬で消滅するこの設定を持ち出したことは評価したい。尺が足りていないせいでウルトラマンが人間の可能性を信じる理由が弱過ぎたのが残念なところ。
あと、生物兵器として人類は有用という話がメフィラスとの主要な話だったのだが、そのメフィラスを見逃してしまうのは違和感が強かった。ウルトラマンに出て来たメフィラス星人は、地球人の心を屈服させられなかった故に地球侵略を諦めて引き分けという形で立ち去った。しかしこちらのメフィラスは生物兵器として人間が有用だから独占したいという考えなのだ。つまるところ1000人ばかり拉致して繁殖させれば独占は無理にしてもかなり優位に立てる。その後、結果的にゾーフィの目的が地球の破壊になったが、それもこの時はまだ分かっていないことだった訳で、ウルトラマンの思考どうなってんの?というのは疑問に思えた。
『科特隊』を『禍特対』に改変したのは、おそらく庵野か樋口がどうしても『カトクタイ』という音の響きを残したいと考えて、その為にまず『怪獣』を『禍威獣』表記にすることで、その『禍威獣』に対応する組織という意味合いの『禍特対』というワードを捻り出したものと思われ、たしかに多少ムリヤリ感はなくもないけど、個人的にはよくぞやってくれたとも思ってます(笑)