「特撮映画をCGで作ることの限界」シン・ウルトラマン クソチキンゴミ眼鏡さんの映画レビュー(感想・評価)
特撮映画をCGで作ることの限界
特撮映画の定義は色々あると思うけど、個人的に絶対外せないものが「本当にいるんだ」と思わせてくれる作品であるということ。
その点では本作はCGがあまりに丸出しで合成感が強く、ウルトラマンや怪獣の存在を感じることは全くできなかった。
たしかにCGによって、着ぐるみでは不可能な動きを実現することはできたのかもしれない。
ただそれによって「地面を踏み締める重量感」「ぶつかり合う衝撃」「呼吸することで生まれる存在感」といった、特撮においてなくてはならないものが失われてしまったと思う。
これは、はるかに精密なCGで描かれていたハリウッド版ゴジラでも無かったので、ここがCGによる特撮映画の限界なんだなと感じた。
ストーリーについては基本的に「シン・ゴジラ」のテイストと変わらず、人間社会や政治に対する風刺がメイン。
ただ今回はコミカル感を意識したのか分からないが、ちょっとあまりに日本政府は軽薄過ぎる感が否めず、「シン・ゴジラ」ほど社会風刺も刺さらない。
何より1番見たいのはウルトラマンと怪獣とのバトルなのに、中盤からはウルトラマンや宇宙人の技術の政治利用といった、地球人メインのストーリーとなっていたのが勿体ない。
政治パートが長かったのに風刺が刺さらないのは、ちょっと厳しいものがあった。
総じて色々詰め込み過ぎており、結果として特撮としても風刺映画としても「リアリティ」が薄く中途半端になったように思う。
ただ、単純に敵として戦えば良かった「シン・ゴジラ」と異なり、ウルトラマンをどう扱うかというのは非常に難しいテーマだと思うので、その点ではかなりの意欲作だった。
「ウルトラマン」という日本の財産と言っても良い題材に新たな切り口を生み出したのは、流石は庵野秀明×樋口真嗣のコンビだと思う。