hisのレビュー・感想・評価
全111件中、1~20件目を表示
あちこちにあふれる差別と排除、そして子育てに悩む人必見
何より、この映画のラストが好きだ。一番遠かったはずの2人が、ふっと秘密を共有する。穏やかな幸せが、じわじわと伝わってくる。一方で、彼らの着地点は、あやういバランスの上に成り立っている。だからこそ、かけがえがない。だからこそ、大切にしたい、と感じた。
同性愛者を真正面から描いた作品、として注目される本作。確かに、中心となる2人は同性愛者だ。けれども、彼らが向き合い、乗り越えようとするハードルは、誰しもが抱える、普遍的なものに思えた。いわれのない差別、普通じゃない、当たり前から程遠い、と排除されることへの恐れ。そんな諸々は、世の中の至るところに転がっている。
2人の過去は、冒頭のシーンと再会後の会話で語られる程度だ。けれども、中盤に挿入される迅の会社員時代のワンシーンに、彼の孤独がにじむ。逃げるように縁のない田舎へ移住し、他との関わりを最小限にしてきた迅。一方渚は、開放的でせつな的な生き方を楽しんできたように見えるが、むしろ満たされなさは埋められず、行き詰まっている。立ち止まり進むのをやめた迅と、立ち止まるのを怖れるように駆け抜けてきた渚。再び出会った2人が、渚の娘や村の人々との関わりを重ねながら、それぞれに葛藤し、仕切り直しを試みていく。
互いを思うからこそ、新たに前進しようとする2人。彼らの背中をそっと押す、村の老人たちの卓見が素晴らしい。普段は無口でぶっきらぼうだからこそ、ここぞ、の一言がまっすぐに届き、心に響く。日々の子育てで何かと口煩くなってしまう自身を思うと、身が縮むばかり…。いつかは自分もこんなふうに、と凝り固まった心のひだが伸びる気がした。
自然光が眩しい村で広がっていく2人の物語から一転、後半は、光が届かない室内での息詰まる法廷劇に至る。偏見にさらされるのは、2人だけではなかった。仕事に追われてきた若い母親は、親権争いで思わぬ窮地に立たされてしまう。仕事が出来るだけでは許容されない、頑張りが空回りしてしまう彼女の姿が、人ごととは思えず、身につまされ切なかった。だからこそ、あたたかなラストには心洗われた。
どっぷり映画にのめりこみ、じっくりと浸った2時間。いつもより優しい気持ちに満たされながら、いそいそと子らのお迎えに向かった。
社会にある「普通」の抑圧を浮かび上がらせた
脚本が大変に良く練られている作品だと思う。同性愛者が現代社会を生きる上で直面する現実が描かれ、親権における男女の扱いの違いがそこに加わり、「普通」って何なのかを問う。地方をステレオタイプに描かないのもいい。
日本の離婚裁判において、親権は母親に与えられることが多い。それは、子育ては母親がするものだ、という強固な固定観念が存在しているから。しかし、この映画に登場する夫婦は、男性側が育児をして、女性が働いている。男性は、ゲイの自分が子どもを持つということ自体、人生の選択肢になかったが、その選択肢が自分にもあると考えた末の結婚だった。子供に対する複雑で切実な思いが非常に上手く描かれていた。
親権が母親に渡りやすいのは子育てをしているから。しかし、このケースでは父親の方が有利となる。結果、妻側の弁護士は、ゲイのカップルが子どもを育てるのは「普通」じゃない、という方向の戦略で争うことを選択する。妻も差別はしたくないと思っている、しかし、現在の親権裁判ではそれが「合理的」な選択となってしまう。
「普通」の生き方、「普通」のカップル、「普通」の子育てとはなんだろう。社会にある「普通」の圧力を見事に浮かび上がらせている作品だ。
宮沢氷魚の自然体が新たな可能性を示唆
一度は別れたゲイのカップルが、突然の別れを告げられた側が自身のセクシュアリティを隠して暮らす田舎で、再び突然の再会を果たす。あれから、相手は結婚し、別居し、傍に愛娘を連れていた。そうして始まる第2の同棲生活(+1)は、彼らの事情を深く追求せず、隣人として受け入れる山里のコミュニティの、他者に対して垣根を設けない寛大さによって支えられていく。一見、理想論にも思える設定は、脚本家のアサダアツシがかつてゲイの仕事仲間から言われた、「恋愛っていいなと思えるドラマをいつか書いてよ」という願いに答える形で生まれたもの。でも、この物語は養育権を巡って夫婦が対決する法廷の中で、シングルマザーとして子育てする妻側の言い分と事情もきっちり描いて、理想と現実の間にきっとあるはずの"落としどころ"を発見している。いろいろ事情はあるにせよ、人はどんな形でも寄り添えるに違いないという、理想を超越した確信のようなものが伺えるのだ。同時にこれは、自分を捨てた恋人を葛藤しながらも受け入れる主人公の、究極の恋愛ドラマでもある。演じる宮沢氷魚の自然体が、このジャンルの新たな可能性を感じさせて秀逸だ。
今泉流の愛や家族、周囲の人々との絆の描き方がとても心地よい
今泉作品には、飄々とおかしい雰囲気のコメディもあれば、人間関係を真摯に暖かく描いたドラマも多い。本作は後者の部類に含まれるのだろうが、男と男が育む愛に、前妻やその間に生まれた娘までもが相まって、この複雑な関係性の中に唯一無二の絆が立ち上る瞬間を愛おしく描いてみせる。
当事者のみでは解決し得ない問題をどうするか。この難問にぶちあたった時、自分の世界や考え方に閉じこもるのではなく、視野をちょっとだけ広げて、周囲を巻き込んだ「社会」に目を向けるのがとても心地よい。脇を固める役者陣もとても印象深く「人間っていいな」と思わせてくれる。そこでふと気づく。本作には悪人が一人もいないのだ。
誰もが善き人でありたいと願っている。だがほんのちょっとベクトルの向きが違って、最も近しい人の苦しみが生まれてしまう。そんな事態に焦点を絞る後半、かすかに『クレイマー、クレイマー』の香りを感じたのは私だけだろうか。
面白かったです
裁判の後半に、あのような決断になるとは予想してませんでした。
(弁護士が奥さんを攻め立ててる感じを見てる時に、そうなるんじゃないかとは思いましたが)
そして、そらちゃんがとにかく可愛かった!
演技がとても上手でした。
婚姻制度が時代に合わないのでは?
今どき好きになる相手が誰であっても、外野は口出しできません。明治時代になるまでは庶民はもっと自由でしたが、明治からスタートした婚姻制度がそもそも人間の性質に合わないのだと思います。
本作は女性が働き続ける困難さ、頼る人間が身内(母親)しかいないという膠着した社会も描いていました。婚姻制度だけではなく、社会が子供を育てるようになればもっと子供が産まれると思います。
根岸さん演ずる近所の老婆が、「こんな歳になったら誰を好きになっても関係ねえ」みたいなことを言ってましたが、恋愛に限らず生き方もまさにそうですね。
考えさせられた
正直見てて登場人物全てに共感できた。
だからこそ旦那役に腹を立ててしまった。
どんな理由であれやっていることが無責任すぎる。
子どもが望む未来が正しいのかもしれないが、あまりにも傷つけた人が多すぎる。
あなただけの人生ではないよ。。
何が普通?
宮沢氷魚が出ている作品を見たので他の作品も、と思いこちらを選択。
学生時代に同棲していたゲイカップルが13年後、田舎で娘を連れた状態で再会。
田舎でマイノリティが生活すること、離婚裁判や親権争い、が焦点の作品。
裁判で、通常だと・常識では、みたいな言葉が弁護士から飛び出す。
近年は里子でも夫婦ではない場合もあるし、何をもって普通なのか、を問われることが多い。
白川町のあたたかさと、麻雀おばちゃんのかっこよさ。
記憶に残るシーンがたくさんあった。
緒方のおじちゃんが迅を連れて、山に行くシーン。
その緒方のおじちゃんの葬儀で、迅のカミングアウトを、何事もなかったのように笑ってしまう、麻雀おばちゃんの一言。
裁判の後、宙ちゃんの声を電話越しに聞く、渚の姿。
「同性愛」がこの作品の主軸に見えた。
でも結局、「ひとが人を好きになること」それが異性か同性か、ただそれだけなんだと、
宙ちゃんの存在や言動がそう思わせてくれる。
この映画は人のやさしさに溢れていて、とても温かい気持ちになります。
二人が光る
男同士、どんなのだろうと観てみた。
主役の男性二人が心綺麗。異性カップルであっても心が貧しければ子供は敏感に感じ取る。
この二人に育てられた子は必ず幸せにすくすく育つと思う。しかし、奥さんの意思も尊重しないと可哀想。お腹だけ貸したみたいになる。
結局時々会って三人での子育てが最良かな。村人が余計な詮索せず優しく温かく見守ってくれる移住してみたい気になる村。
性差なく人としての生き方を教えてくれる作品。
氷魚くんがいい。 女の子もいい。 今泉さんというと、ねじれた...
氷魚くんがいい。
女の子もいい。
今泉さんというと、ねじれた難しいものを撮ってる印象があったけど、この作品はすごくいい。空ちゃんの声を聞いて、ママに謝って、ママと過ごす時間を作ってあげた展開が素敵だ。緒方さんのような存在も。
ゲイとその周りの人たちが子どもを育てていくイメージが形成されている。
すごく切なかった
離婚とか親権とか同性愛とか色々考えさせられる映画だった。ノンフィクションかと思った。
子どもは何も悪くないのに大人達の勝手で振り回される、
すごく切ない。
とても言葉じゃ表せないくらい、いい映画だった。
男があまりやる気ない!!
薄く長い映画という印象で、一番大事な二人でいて幸せというエネルギーを感じませんでした。それよりも、後ろめたさや世間一般的な批判の描写が長く続き、あまり良い内容ではないと思います。行政職員がいちいちイラつきます。親権裁判で母親が子供に冷たく当たる様が暴かれるのは良かったですが、父親も若いのに何か色々と諦めていてショボかったです。主人公ではなく「(男)は(男)が好きなのに」と重要な台詞を子供に言わせたり、母親に引き取られてやる気を無くしたり、結局はゲイカップルが人生を切り開いて行くのではなく、単に子供をダシにした映画でした。
子どもが教えてくれたこと
空ちゃん最高~でした
子どもって偏見をもって無いから~
この作品は…
BL のはなし?と思いきや
それだけではなかった
BL の抱える周りの偏見や差別
そして子どもの親権をめぐる問題
たくさんの問題が絡み合う
子どもからの…
パパはシュンちゃんが好き
シュンちゃんはパパが好き
空は…パパとママが好き
…シュンちゃんも好き
みんな大好き~
……子どもが教えてくれた
なかなか
子どもと違って
偏見や差別を
リセットするのは難しいですが。
これから世の中が少しずつ変わって
生きやすい時代が来ます様に…
ボーイズラブ(その前、その後・・・
2020年。
「愛がなんだ」「アイネクライネナハトムジーク」などで、恋愛映画の名手・今泉力哉監督最新作。
ボーイズラブのその後を描いて鮮烈でした。
大学生の時、迅(宮沢氷魚)は、知り合った渚(藤原季節)と同棲していました。
渚から一方的に別れを告げられた迅は、岐阜県白川町に引っ越して、ひっそりゲイを隠して生きていました。
そして8年ぶりの渚との再会。
渚は6歳の自分の娘の空(外村紗玖良)を連れて迅を頼って来たのでした。
戸惑いつつも、迅と渚と空の生活は始まります。
しかし渚は妻とは離婚調停中で、空の親権を争う身だったのです。
この映画はボーイズラブを差別したり偏見にまみれたりしていないのです。
迅の同僚も村のお年寄りも、みんな3人に優しいのです。
そこは心地いい・・・だれも好奇心はあるけれど、否定はしません。
「だれが、だれを好きになったって良いさ、」
ニュアンスは男同士だって愛は同じさ・・・と理解してくれます。
後半は法廷劇です。
裁判を通して空の親権を妻(松本若菜)と渚が争うのです。
妻の立場も辛いですよね。
夫が自分のゲイを隠して結婚して子供までいるのに、やっぱり俺ゲイだから、無理・・・なんて言われたら、
最後まで責任もってよ・・・って言いたいです、私なら・・
でも裁判は迅と渚にとって、自分と向き合い真のアイデンティティを見つめる良い機会になったようです。
迅を演じる宮沢氷魚さんの清潔感溢れる演技が良かったです。
渚を演じる生身の偽らない藤原季節さんも、空ちゃんを通して大人になる演技が迫りました。
そしてなんと言っても空の外村紗玖良ちゃんの演技に参りました。
迅と渚と空の10年後、20年後が、絶対に見たい・・そう思いました。
過去鑑賞
これは観てよかった。
都心部でも言えないのにあんな田舎で自分は同性愛者ですなんてよく言ったな…。今泉力哉監督は俳優陣が良いし、今泉力哉自身も映画作りが上手いなぁ。という訳でこの映画は観るのオススメです。以上!
幸せの定義があったらいいのに
同性愛者の苦悩、子育ての苦悩、色々あったがやっぱり子供が1番つらいよね。って思う。何が幸せかなんて誰も分からないけどみんなが幸せを祈ってるし、自分も幸せでいたいと思う。普通の幸せとはなんだろうな。
願いが込められたような作品
同性愛者と子どもと親権が絡む、意外と無かった複雑な物語。
元BOOM宮沢の子で、これがそっくり。正確にはすごくイケメンになった宮沢って感じでしょうか。
背が高くとても細い指先、それと透明感のある表情が何ともいえない。
それと悪い人を置かず、皆をフラットに映し出すのも良かった。
印象的だったのが噂好きのおばちゃん。
底意地が悪そうな位置なのに本当は懐が深く、独白に対する一言がものすごく優しい。あのシーンはさすがに涙が出ました。
こんな優しい世の中になって欲しいという願いが込められたような、
何だかとても温かみがある作品でした。
全111件中、1~20件目を表示