hisのレビュー・感想・評価
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社会にある「普通」の抑圧を浮かび上がらせた
脚本が大変に良く練られている作品だと思う。同性愛者が現代社会を生きる上で直面する現実が描かれ、親権における男女の扱いの違いがそこに加わり、「普通」って何なのかを問う。地方をステレオタイプに描かないのもいい。
日本の離婚裁判において、親権は母親に与えられることが多い。それは、子育ては母親がするものだ、という強固な固定観念が存在しているから。しかし、この映画に登場する夫婦は、男性側が育児をして、女性が働いている。男性は、ゲイの自分が子どもを持つということ自体、人生の選択肢になかったが、その選択肢が自分にもあると考えた末の結婚だった。子供に対する複雑で切実な思いが非常に上手く描かれていた。
親権が母親に渡りやすいのは子育てをしているから。しかし、このケースでは父親の方が有利となる。結果、妻側の弁護士は、ゲイのカップルが子どもを育てるのは「普通」じゃない、という方向の戦略で争うことを選択する。妻も差別はしたくないと思っている、しかし、現在の親権裁判ではそれが「合理的」な選択となってしまう。
「普通」の生き方、「普通」のカップル、「普通」の子育てとはなんだろう。社会にある「普通」の圧力を見事に浮かび上がらせている作品だ。
宮沢氷魚の自然体が新たな可能性を示唆
一度は別れたゲイのカップルが、突然の別れを告げられた側が自身のセクシュアリティを隠して暮らす田舎で、再び突然の再会を果たす。あれから、相手は結婚し、別居し、傍に愛娘を連れていた。そうして始まる第2の同棲生活(+1)は、彼らの事情を深く追求せず、隣人として受け入れる山里のコミュニティの、他者に対して垣根を設けない寛大さによって支えられていく。一見、理想論にも思える設定は、脚本家のアサダアツシがかつてゲイの仕事仲間から言われた、「恋愛っていいなと思えるドラマをいつか書いてよ」という願いに答える形で生まれたもの。でも、この物語は養育権を巡って夫婦が対決する法廷の中で、シングルマザーとして子育てする妻側の言い分と事情もきっちり描いて、理想と現実の間にきっとあるはずの"落としどころ"を発見している。いろいろ事情はあるにせよ、人はどんな形でも寄り添えるに違いないという、理想を超越した確信のようなものが伺えるのだ。同時にこれは、自分を捨てた恋人を葛藤しながらも受け入れる主人公の、究極の恋愛ドラマでもある。演じる宮沢氷魚の自然体が、このジャンルの新たな可能性を感じさせて秀逸だ。
今泉流の愛や家族、周囲の人々との絆の描き方がとても心地よい
今泉作品には、飄々とおかしい雰囲気のコメディもあれば、人間関係を真摯に暖かく描いたドラマも多い。本作は後者の部類に含まれるのだろうが、男と男が育む愛に、前妻やその間に生まれた娘までもが相まって、この複雑な関係性の中に唯一無二の絆が立ち上る瞬間を愛おしく描いてみせる。
当事者のみでは解決し得ない問題をどうするか。この難問にぶちあたった時、自分の世界や考え方に閉じこもるのではなく、視野をちょっとだけ広げて、周囲を巻き込んだ「社会」に目を向けるのがとても心地よい。脇を固める役者陣もとても印象深く「人間っていいな」と思わせてくれる。そこでふと気づく。本作には悪人が一人もいないのだ。
誰もが善き人でありたいと願っている。だがほんのちょっとベクトルの向きが違って、最も近しい人の苦しみが生まれてしまう。そんな事態に焦点を絞る後半、かすかに『クレイマー、クレイマー』の香りを感じたのは私だけだろうか。
考えさせられた
正直見てて登場人物全てに共感できた。
だからこそ旦那役に腹を立ててしまった。
どんな理由であれやっていることが無責任すぎる。
子どもが望む未来が正しいのかもしれないが、あまりにも傷つけた人が多すぎる。
あなただけの人生ではないよ。。
何が普通?
宮沢氷魚が出ている作品を見たので他の作品も、と思いこちらを選択。
学生時代に同棲していたゲイカップルが13年後、田舎で娘を連れた状態で再会。
田舎でマイノリティが生活すること、離婚裁判や親権争い、が焦点の作品。
裁判で、通常だと・常識では、みたいな言葉が弁護士から飛び出す。
近年は里子でも夫婦ではない場合もあるし、何をもって普通なのか、を問われることが多い。
白川町のあたたかさと、麻雀おばちゃんのかっこよさ。
記憶に残るシーンがたくさんあった。
緒方のおじちゃんが迅を連れて、山に行くシーン。
その緒方のおじちゃんの葬儀で、迅のカミングアウトを、何事もなかったのように笑ってしまう、麻雀おばちゃんの一言。
裁判の後、宙ちゃんの声を電話越しに聞く、渚の姿。
「同性愛」がこの作品の主軸に見えた。
でも結局、「ひとが人を好きになること」それが異性か同性か、ただそれだけなんだと、
宙ちゃんの存在や言動がそう思わせてくれる。
この映画は人のやさしさに溢れていて、とても温かい気持ちになります。
二人が光る
男同士、どんなのだろうと観てみた。
主役の男性二人が心綺麗。異性カップルであっても心が貧しければ子供は敏感に感じ取る。
この二人に育てられた子は必ず幸せにすくすく育つと思う。しかし、奥さんの意思も尊重しないと可哀想。お腹だけ貸したみたいになる。
結局時々会って三人での子育てが最良かな。村人が余計な詮索せず優しく温かく見守ってくれる移住してみたい気になる村。
性差なく人としての生き方を教えてくれる作品。
氷魚くんがいい。 女の子もいい。 今泉さんというと、ねじれた...
氷魚くんがいい。
女の子もいい。
今泉さんというと、ねじれた難しいものを撮ってる印象があったけど、この作品はすごくいい。空ちゃんの声を聞いて、ママに謝って、ママと過ごす時間を作ってあげた展開が素敵だ。緒方さんのような存在も。
ゲイとその周りの人たちが子どもを育てていくイメージが形成されている。
すごく切なかった
離婚とか親権とか同性愛とか色々考えさせられる映画だった。ノンフィクションかと思った。
子どもは何も悪くないのに大人達の勝手で振り回される、
すごく切ない。
とても言葉じゃ表せないくらい、いい映画だった。
これは観てよかった。
都心部でも言えないのにあんな田舎で自分は同性愛者ですなんてよく言ったな…。今泉力哉監督は俳優陣が良いし、今泉力哉自身も映画作りが上手いなぁ。という訳でこの映画は観るのオススメです。以上!
幸せの定義があったらいいのに
同性愛者の苦悩、子育ての苦悩、色々あったがやっぱり子供が1番つらいよね。って思う。何が幸せかなんて誰も分からないけどみんなが幸せを祈ってるし、自分も幸せでいたいと思う。普通の幸せとはなんだろうな。
願いが込められたような作品
同性愛者と子どもと親権が絡む、意外と無かった複雑な物語。
元BOOM宮沢の子で、これがそっくり。正確にはすごくイケメンになった宮沢って感じでしょうか。
背が高くとても細い指先、それと透明感のある表情が何ともいえない。
それと悪い人を置かず、皆をフラットに映し出すのも良かった。
印象的だったのが噂好きのおばちゃん。
底意地が悪そうな位置なのに本当は懐が深く、独白に対する一言がものすごく優しい。あのシーンはさすがに涙が出ました。
こんな優しい世の中になって欲しいという願いが込められたような、
何だかとても温かみがある作品でした。
今泉監督にしては分かりやすい
今泉監督の作品はいくつか観ています
氷魚くんの作品も気になって見てみました。
ありふれたLGBTの作品の中で現実味を帯びている作品
無理に非現実感を強調せず他の作品と違って偏見や差別感がなく見やすかったです
現代社会における恋愛と家族のあり方を問う作品
これはただのゲイ映画ではない。
同性愛者への差別問題だけでなく、仕事と家庭の両立や核家族での育児、都会と田舎暮らしの現実など、現代を生きていくうえでぶちあたる様々なテーマが織り込まれている。
それでいて重くなり過ぎず、同性愛と家族を持つことの間で揺れながら親権裁判を行なっていくストーリーで見事に紡いでいる。
同時に、保守的な考えやしがらみが強い田舎だけど、よそ者を受け入れていくこれからの多様性の社会も描いている。
今泉力哉監督は絶妙に絡み合う恋愛人間関係を描くのが巧みである。
身構える必要のない描き方に光る監督のセンス、偏見の世界を泳いでいることに気づく
恋愛映画の名手、今泉力哉監督の最新作『あの頃。』公開にちなんで鑑賞。同性愛が題材だけに身構えていたが、それ以上のモノを突きつける優しい映画で、心が優しくなったような気がした。
迅は、自分がゲイであることを隠すことが最善であると考え、岐阜でひとり暮らしていた。そんなある日、かつての恋人の渚が、8年ぶりに現れる。子どもを連れて…。ここで描かれるのは、同性愛を入り口としながら、"偏見"を主軸に置いている。だから、他人事では全くなく、むしろ作品全体から、受け入れることへの葛藤と決めつけの危うさを炙り出している。その際、人の優しさが浮かび上がることで、暖かな作品へとまとめている。個人的には今泉力哉監督を、「時」「空」の使い方がうまい監督だと思っている。長回しから生まれる緊張感などの「時間」、距離感で雰囲気と感情を繊細に綴る「空間」。この2つがリアルかつ深いテーマへと誘う。よって、余韻と心に届くような作品の柔さを生み出している。こんなテーマだからといって、身構えることがナンセンスであり、意とせずとも色眼鏡はかかった世界を生きているのだと改めて気づいた。同時に、純粋たる子どもの土台にこそ、同性異性と隔てることのない価値観を生み出すことで、この世の新たなスタンダードが出来ていくのではないかと思った。
今のところは、まだまだ同性愛への理解が足りていないのが日本の現状。国の偉いお方がポロリと言ったのも、日本の風潮が根底にあることは否定できない。だからこそ、受け入れる器と勇気が、我々にも必要なのだ。愛を伝えるのが一層難しくなった今だからこそ、優しくなりたいと思える。
この歳になると、男も女も分かりゃしねぇよ!しゅん、長生きしろよ
○最初はお互いのエゴだったけど、だんだんそらちゃんが主軸で話し合いが進んでいくのがよかった
○誰の気持ちもわかる
○裁判のシーンが多いけど、展開に目が離せなかった
○「誰かに影響されるのが人生の醍醐味ってもんだ」
→大好きで大切だけど、きっとこれから疎遠になってしまう人、もう会えないかもしれない人が私には沢山いて。どうせ別れるのなら関わらずにいた方がいいんじゃないかって思ったりして。でも、影響されて変わっていった自分自身が、その人といた証なんだなって思って泣けた。
○「この歳になると、男も女も分かりゃしねぇよ!しゅん、長生きしろよ」
○東京の飲み会のシーンがリアルだった
○チョコレートドーナツみたいにならないかと心配だったけど、誰もがそらちゃんを愛していたのがとてもよかった
○弁護士が心の奥の部分をずばずばと刺してくるのが痛かった
○パパがママに謝って、しゅんくんとママとパバが一緒になって過ごす、それが実現できて良かった
○結果、そらちゃんの望む形に極力添わせたのが良かった
○主題歌がよかった
○田舎暮しの心地良さがあった
愛があふれる作品
「愛がなんだ」で今泉力哉監督のファンになり、彼の作品の多くに触れてきたけど、こんなに心を揺さぶられた作品はない。三回観賞して、見るたびに涙の量が増えてくる。この監督の脚本による言葉たちはなんて優しく深いのだろう。これしかないだろうというキラキラした言葉に鷲掴みにされる。妻も片想いの彼女も、いとおしい存在。もちろん子役の天才的な演技には驚嘆させられた。この作品は長く宝物になると思います。
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