「抑えた演出、それがいい。」オフィサー・アンド・スパイ バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
抑えた演出、それがいい。
まずお話(史実に忠実なんですよねぇ〜?どうなのかな?)自体が面白いというか、スペクタクルなんですよね。時代的に軍、司法、国家も巻き込んでいるかな?それらの組織全体を敵に回すという壮大な1人対組織という物語。会社という組織に属している自分からしたら、ピカールすげえ、、、の一言です。尊敬するけど、友達にはなれないかなぁ(笑)だって、最高に偏屈っぽいし、心開く人じゃない=ワキが甘くない人っぽいし。そんな方が負けが見えている戦いに自身のポリシーを守るために挑むってのが熱いじゃないすか!
本作この逆転劇(と言っていのかなぁ?)にエンタメ要素を盛り込んでいないところが良いですね。意図的なドラマティック演出がなく、非常に抑えている雰囲気です。けどねそれが良いと思うのです。映像は綺麗なんだけどずーーーーっと暗い。どんよりと重苦しい。これも時代つてことなんでしょうかねぇ。劇的な展開ではあるものの、語りたいのはそこじゃなくって作品全体にずーっとある反ユダヤ主義とナショナリズムのテーマを語りたかったのかなぁ?なんて思います。そこを強く出したかったからこその、非ドラマティック展開だったのでないかなぁ?終始「おかしいじゃん!こんなの」なオンパレードで。
ピカールはまぁ道義的に「?」がつく女性関係はあるにせよ(フランスは寛大なのかな?)偏見を持たない男。周りに流されない芯の強さと妥協をしない強さを持っています。彼だからできたのでしょう。けどね、彼のような想いは多くの人々が持っていなければならないはずなんだけどなぁ。なぜに安定を手に入れるとそれを壊さないようにするために、やってはならないことをやり始めるのか?正直になれなくなるのか?悲しいですよね。
本作は社会派ドラマとして秀逸だと思いますし、そこそこ長いのですが気にならない面白味はあります。ですが、過去の性暴力事件の前科があり嫌疑が多いポランスキーの作品ということで評価は下げてます。芸術家の前に、人間でなければならないと僕は思うのです。はい。