劇場公開日 2020年10月9日

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「残虐なる者」異端の鳥 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0残虐なる者

2020年11月29日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

原作はイエールジ・コジンスキーの”Painted Bird”で、1965年の著書。調べてみると”Being There”、後にピーター・セラーズ主演で映画化される「チャンス」の原作の著者でもありました。やっぱり「奇譚的なんだ」と、ここで納得。

観ていて、何時頃の話?場所はどこやねん?と疑問だらけになって来ます。ドイツ軍の偵察機はFi156でWWⅡ。ソ連軍の戦車はT-34。狙撃に使った銃はM-1891、短機関銃はM-31と思われ。ドイツ・ソ連戦が展開されているし、ホロコーストもあるが故、WWⅡの東欧であることは間違いないんですが、野盗化したコサックが闊歩してるってのが。WWⅡ時点では、ほぼ壊滅していたはずのコサックは、ドイツ軍と共にソ連軍との戦闘に参加した歴史はありますが、単独で村々を襲うのは時代的にも説得力無いし、場所的にも東欧では。ちょっとねぇ。

「本作の言語には舞台となる国や場所を特定されないよう、インタースラーヴィクという人工言語が使われている」との解説もWikiで見つけました。少年が彷徨う道程で巡り合う、禄でも無い人々も体験も奇譚的であり、リアリズムと言うより生々しさを強調した描写も現代的ではないとの印象。

局面での残虐な場面も、原作が1965年に書かれたものであることを思えば、特に突出した感も特異性も感じられませんが、「人々と世間の残虐性」に対して、ドイツ・ソ連両軍の兵士が見せる「個人レベルでの優しさ」と言う対比の中で進んで行く「時代物のロードムービー」の指摘するものには共感を覚えます。

Painted Bird

軍やコサックの暴力に虐げられた人々が、更に「異物」である少年を虐げる。軍人は、個人レベルでは優しさを見せたりする訳で。「異物とみなされた少年の身に降りかかる残虐な扱い」って、主題は、それじゃない。

「色を塗る=異物にしてしまうのは誰か」

もっと言うと。
「一番酷いのはお前だよ」

そんな映画でした。
世界を放浪してアメリカに辿りついたイエールジ・コジンスキーの内心の呟き、だったんでしょうかね。って事で。

bloodtrail