「人間の残虐な本質を崇高なクオリティで描いた凄い作品」異端の鳥 mayuoct14さんの映画レビュー(感想・評価)
人間の残虐な本質を崇高なクオリティで描いた凄い作品
凄まじい作品を観ました。おそらく、その凄まじい歴史が刻まれた国(チェコ、スロバキア、ウクライナ)でない、日本では絶対に作れない映画でしょう。
2時間50分の尺に収められた、何年もの長い長い地獄の旅路を観客は共に歩むことになります。
時代性、現実味を排除した美しい風景の映像美。それを素晴らしいクオリティで見せてくれます。一方で、匿名性と普遍性を持った「よくわからない時代や国、土地」で生きている普通の人々が起こすいじめ、叱責、闘争、リンチなどの異質排除の行動。
主人公の少年は、何度も逃げ延びて、また何度もそういう酷い目に遭います。
目を覆うような経験を何度もする中で、無垢な子供の心は、人間の持つ本質によって汚され、確実に変質を遂げていきます。
自分と共に居た、可愛がっていた動物をその手で埋めていた少年は、映画の最後付近では、自分に危害を加えた大人を「銃殺」という形で復讐します。
人間は、本来は共食いや弱肉強食の摂理に抗うことのない存在であること、それが異質排除という行動に現れることを、過激に、冷徹に、映画を見る私たちに突きつけて来ます。
ある象徴的なワンシーンとともに。
繰り返しますが、とにかく「凄まじい」映画です。原作は映画よりもっともっと過激だという記事を読んで身体が震えました。
(原作は母国ポーランドで発禁になり、原作者のイェジー・コシンスキは自殺しているようです)
しかしながら、私たち人間の本質にはこのような異質排除に伴う残虐性が存在するのだという、深い問いに気付くこともできるのです。
この先も、何かあるたびにこの映画を思い出すのではないか、そんな「脳にこびりつく」映画であることだけは言えると思います。
勇気を持って、映画に包含された「真実」や「本質」を見て、考えていただきたいです。
一生忘れられない映画の一本になると思います。