「「結婚のお話」(子無しの独身者にはわからないお話)」マリッジ・ストーリー もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
「結婚のお話」(子無しの独身者にはわからないお話)
独身主義者で子を設けたことのない私には、この夫婦の感情の縺れ、あや、機微、愛憎などを理解出来たと自信を持って言えない。
独身主義者としては大体生まれも育ちも違う全く赤の他人の二人(男女には限らないが)が何年も一緒に暮らせるというのが或る意味不思議である。(社会の最小単位である夫婦とその家庭とを否定している訳ではない。)よほど忍耐と妥協点とを要求されるものと想像する(まあ、人生も忍耐力と妥協との連続ではあるが)。恋愛の経験はあるので、惚れたはれた(少しでも長く側にいたい、ずっと一緒にいたい)は理解できるが、そういう気持ちは数年しか続かないことも分かっている。既に結婚という(社会的に言うと)契約を交わしてしまったカップルはその後もその形態を続けていくことにどういう折り合いをつけているのだろうか。恐らく各々が結婚という状態を続けていく事が自分にとって何らかの意味や価値やメリットがあると判断するからであろう。勿論、国によっては経済的な問題や、子供の問題(しかし子供というのは敏感なもので、両親間の空気というものを察してしまうものだ。子供にとって大事なのは各々の親から愛されているかどうか、ということだと思う。)、一人でいるのが寂しい、面倒くさいということ含めて…
で、この映画は結婚を続けていくことに意味や価値を見出だせなくなった一組の夫婦(特に妻の方がより)のお話である。しかし離婚を軽く(?)考えていたこの夫婦は、結婚というものが社会の中での一つの契約形態であるからには、それを解消するにも社会が絡んでくるのを良く理解していなかったことから、自分達の思惑を越えて事態は泥沼化していく。また、ローラ・ダーン演じる妻側弁護士の『離婚訴訟に勝つためには、建前でも妻は聖母マリアで有ることが必要なのよ!』という台詞は、「勝つこと」が優先されるUSAで、女性が勝つために求められるのは旧態依然といた処女性というのが、いかにも皮肉で興味深い。他方、離婚を切り出した妻(女性)は結局最後まで強い。ヨヨと泣き崩れたり、バーで『僕は生きている』と歌うのは、ここでは男の方なのだ。映画としては良く出来ている。演技的には、チャーリーがLAに借りた家での互いに相手をメッタギリにする喧嘩シーンがハイライトであろう。ベルイマンの『ある結婚ぬの風景』での凄まじい夫婦喧嘩シーン(特にリヴ・ウルマンの演技とはとても思えない演技)を観た後では、どんな夫婦喧嘩シーンも生ぬるく見えてしまうけれども、このバトルシーンの緊迫感もなかなかのものであった。然し、ヘンリーの為にも仲直りできないかな、と儚い望みを持ちながら観ていたが、あそこまで言い合っちゃうと最早修復は不可能ですな。
※追記:ニコールの母親役の女優、どこかで見た顔だなぁ、と思っていたらジュリー・ハーガティだった。懐かし~