ホモ・サピエンスの涙のレビュー・感想・評価
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天使のささやき
この監督の映画は初見だが、随分高踏的な作風だなぁと。エピソード集というほど物語性があるわけでもなく、ただ人生の断片をそっけなく提示する。灰青色の世界で人々は一応にやるせなく佇んでいる。時と場所を問わず「〇〇を見た」と語るナレーターは、何かしら超越的な存在なのだろう。信仰を失った牧師が何度か登場するところを見ると、“神の不在”がテーマなのかもしれない。
男女が痴話喧嘩をするかたわらの魚屋の店先に、フェリーニの「甘い生活」のラストに出てきたような怪魚がいるのが気になった。
配給会社も売り方に悩んだのだろうが、邦題は意味不明で、もう少し何とかならなかったものか。
北欧的な暗さとシュールさ。日本人ウケは難しい。
映画評観ると、全然評判良くないけど、ベネチア国際映画祭で銀獅子賞を獲ってるそうで、日本ウケ、一般ウケしないだけかな?案外面白かったりして、と思って観てみた。
33シーンをワンシーンワンカットで撮影、たくさんの人の日常のひとコマを切り取っているような構成。
…不思議な味わい!!
この作品を分かったとは言い難いけど、なんか悪い気がしない。
色調がいかにも北欧らしく、暗いけど温かい感じで、絵画的な美しさがある。
このテイストはとても好き!!
そしてこれまた北欧的に、全体的になんかシュール。
淡々と過ぎていくシーンの中にツッコミどころが多々あって、私はちょっと笑ったんだけど、誰も笑ってなかった。
ゆっくりと時間が流れていて、目や心に優しい感じで、案外、次はどんなのが来るのかな?と興味が尽きなかった。
ちょっと暴力的なシーンや毒もあったけど、それも人間、淡々と淡々と描いている。
ただ、やっぱり日本人ウケや一般ウケは狙えないので、あまり人には奨められない。
個人が抱く悩み、難題は、身近で起き、受け入れ難い。
地雷で両足を失った男の嘆きを、
これほど端的にわかりやすく映像化した!
ふつうに歩く人の、なんと普通な動きが、
不思議に心にまで届くように見えた!
悩みや難題を抱いている人
と、それを見る人、耳を傾ける人の
ズレさ加減が、絶妙すぎる!
毎回、地球人の不思議を、
水族館の水槽の中を見ているかのように、
見せてくれる。(👏)
1時間ちょっとの映画なのに、
いつも、どこかで眠くなる?のは
私だけ?
画面は語る
切り取られたシュールな画面から滲み出る、間の抜けた皮肉と哀愁。
画面が語る奇妙な映像は、人生という壮大な物を映し出していた。
無表情の中でうごめく心情が垣間見え、ますますシュールで思わず笑ってしまう。
コメディより面白い人生は届くくらいの隣にありふれているんだ。
不幸せが大小同じ重さで
日常の中に転がっている小さな不幸は(命取られないだけまし)などと軽く打ち捨てられるが、当事者してみれば、その辛さは比較してはかるものではないだろう!とイラつくことはよくある。そんな小さな不幸と、これから命がなくなるかもしれない不幸、最愛の人を死なせてしまった取り返しのつかない不幸、もう命はないけれどさらに愛する街をなくしたことまで再確認させられる地獄のような絶望、そんなものたちが、同様の小さな幸せこれから来る幸せといったものと等価に並ぶスケッチ。
つながっている話もあるし唐突に投げ出された話もある。
好きなエピソードを時々思い出して、整理のつかない感情と向き合うのがいいのかも
天使から言われた
一段上から人類の悲劇を覗き見る感覚になる作品です。悲劇は止めたくても恐らくずっと止められない。地上に居ると気が付かないけれど、人類はそんなに偉大ではないと天使から言われた気がしました。
この監督ロイ・アンダーソンの近作は独特な構図を持っている この映画...
この監督ロイ・アンダーソンの近作は独特な構図を持っている
この映画も例外でなく、構図がとても印象的になっている
個々のエピソードで人間の抱える一面を切り取って見せてくれる
物語同士のつながりはほとんどない為全体での物語が希薄な感じがする
独特な構図やタイトル写真で見れるシーンのような印象的なシーンはあるが
もう少し全体のストーリーも聴かせて欲しかった印象
悪くはないが良くもないそんな印象の残る映画だった
寝てしまいました
オープニングの空を舞う映像、音楽と相まって美しかったです。
他は、私の想像力ではついていけない、淡々とした情景の切り取りで共感も感動も出来なかったです。
バスで泣く男や、神が信じられなくなり精神医学に答えを、求める牧師には、辟易してしまいました。ごめんなさい。
【脆弱で愚かだが、愛しき市井の人々を描いた数々の掌編で構成された作品。今作品で”クスリと笑った人”は一見"スノッブ"を装っているが、人間性肯定の心優しい人ではないのかな?と思った作品でもある。】
◆"男がいた・・" "女がいた・・"というシンプルな言葉から始まる三十数編の掌編で構成される市井の人々を描いた作品
- 極私的"クスクス"掌編、幾つか・・。-
・神への信仰心を失った牧師さんの話(全三編)
-表層的な診察をする、”帰りのバスの時間を気にする”心療内科医師と、悪夢に悩まされる、牧師さんとのギャップ。
”もうちょっと、ちゃんと診療してあげてよ・・。悩んでいるんだから・・”-
・満員のバスの中で泣く中年男の話
-周囲の無関心を装う人々の姿。だが、一人の男性が"泣くなら家で泣け!"という言葉を叫ぶと・・、女の人が言う言葉。”女性は常に男性より”的確な言葉”を述べるのである・・”-
・レストランで、ワインをドボドボとワイングラスからこぼれるまで注ぐ無表情で、慇懃なウェイター。
-シュールだなあ・・。けれど、オカシイなあ・・。-
・”ある理由”が原因で、”不機嫌な”歯医者さんの話
-治療を放棄してバーに行ったら、ある男がチラチラ舞う雪を見て"美しいだろう・・"と呟き、バーの客が一斉に外界の風景を見る姿・・。”好きなお酒を飲んで、美しい風景を見たら、又、仕事を頑張ろうよ・・”ー
・敗戦が、決定的になったナチスの酒に呑まれた将校達と呆然とした表情のヒトラーの姿
ー個人的にクスクス度が高き掌編。あんなにへべれけになっても、”ハイル・ヒトラーって・・どれだけ、真面目なのゲルマン民族。・・もしくは刷り込み?”
<戦禍で荒れ果てた街の上を抱き合いながら飛行する恋人達の姿を見て
「ベルリン 天使の詩」を思い出した作品。
人間は脆弱で愚かしい。"だが、毎日を夫々の置かれた立場で、一生懸命生きているのだ・・"と思った作品でもある。>
■蛇足
・男性達の多くが、青白い顔で太った人だったのも、監督なりのアイロニーかな?
_φ(・_・途中退場止む無し、、、撤収!
超映画通が観たらとてつもない映画なのでしょう。
奇才ロイ・なんちゃらとかいう有名な監督の作品なのでしょう。
映像が印象的で、、、っていう人もいるのでしょう。
私はこんな映画好きという人もいるのでしょう。
開始50分くらい我慢しましたが、、、。途中退場です。
耐えられませんでした。単調なショートストーリーが延々と、、、、。拷問です。
何が面白かったのか他の人のレビューを見ていますが
わかりません。
本年テネットに次ぐ2回目の途中退場。
眠れる映画
これ、好き嫌い分かれますよね。私はこういう作品堪らなく好きですけど。ストーリー性はないので、ただ芸術を楽しむと言った感じでしょうか。
圧倒的映像美に、美しい音楽、まるで絵画を見ているようでした。
いちいちオシャレでいちいち絵になる構図、スモークがかった空と北欧の街で繰り広げられる33のストーリー。
個人的には若い男女が愛を語り合うシーン、来世はジャガイモでトマトといったエスプリ効いた感じが印象的でした。
寡黙な人々に、スローな動き、美しい音楽、眠くならない要素がない。何度も寝そうになり堪えていたけど、我慢できず10分ほど寝てしまったのが悔しい。
夢十夜
夏目漱石の「夢十夜」。「こんな夢を見た」という書き出しで様々な異世界な物語を語る実験小説。もちろん、映画化もされた(2006年)。そんな「夢」を観たようなロイ・アンダーソンの作品。すべてが彼の夢で見た情景の断片が只管に並んでいく。なんの脈絡もなく、もちろんストーリーの接続もなく。ただただ、夢の主題ではなく、導入部や終幕後の余韻のようなエピソードが羅列されていく。で、そうであることに気づいた観客は、描かれている世界を食い入る様に凝視するが、気付かなかった観客は、抗いがたい睡魔が訪れる。ともあれ、スクリーンの長方形の窓の外に、カメラ的な移動が一切ないまま四角い空間の中で起きる夢の断片が、観る者によっては至福の時間を齎すことになる。
精神の広大さを実感する
全体にモノトーンの印象が残った。カラーのシーンもほぼ白黒のような色調である。イメージが淡いせいで分かりにくい印象の作品だが、難解に考える必要はないと思う。
人間は往々にして人生のちょっとした問題にぶつかる。そのときその人がどのように振る舞うのか。そういったシーンをコラージュのように並べ立ててみたという作品である。当人にとっては大変な問題だが傍から見れば大したことではない。人生の問題というのは大抵そんなものだ。
牧師が信仰をなくしたら、本人にとっては大問題である。しかし信徒にとって何が問題だろうか。牧師に信仰ががあろうがなかろうがその人間が牧師のように振る舞えば牧師なのである。大事なのは彼が牧師であり、教会に牧師として存在しているということで、彼の内面がどうであろうがまったく関係がない。それよりもバスの時間が気になるのだ。
戦争や災害で街全体が廃墟になったとしてもその上を飛行機で飛ぶひと組のカップルにとっては単に眼下の光景でしかない。カップルがそこに絶望を見たとしても、地上では復興のエネルギーが満ちているかもしれない。
道端のカフェで話している若者は、人生の試練について話しているのか、または天下国家を論じているのか、あるいはどうでもいい世間話をしているのか不明だ。それよりもどこからかやって来ていきなり踊りだした三人娘が気になる。
何かを悟ってニーチェのように「すべてよし!」と叫んだ男は、酒場の酔っぱらいとあまり変わらない。歯科医には患者の自己矛盾まで解決する義務はない。
価値観は常に相対的で、壮大な思想もそれを語る人の体の大きさに収斂されてしまう。世界は観測者の視界の中にあり、観測者は固定されていない。あたかも相対性理論を人間の日常生活に持ち込んだかのような作品である。絶対的な価値観を喪って人間はそれぞれに悩むが、その悩みさえも相対化されてしまうのだ。
映されているシーンは常に小さな世界だが、すべてのシーンが人類ひとりひとりの頭の中にあるとすれば、人体の小ささに比して精神の広大さを実感する。そういう映画だと思う。何を肯定するでも否定するでもないのだ。
神業の合成技術
悲喜交々な、とくに「悲しみ」に支配された瞬間を絵画的に切り取っていました。
モネのような印象派から、シャガールの超自然主義まで、様々な絵画の1枚のような、細切れのシーンのみ。
その背景に何があるのかを、観る側が想像することで成り立つ世界。
緊張感をもって、美術館で絵の前に立つ趣で映像に対峙するならば面白いが、気を抜くと一瞬で眠りの世界に落ちる…
いやぁ、眠い眠い。
眠いなんてもんじゃなかった。
まだ、そこまで老成もしていないし、人生の機敏も重みもない我が身には、「この芸術をわかれ」と言われても……
あまりに人としてのレベルが俗すぎて、内容の理解はしかねました。
私にとっての見どころは、特撮でした。
シーンを撮るために用いられたミニチュアとか、マットペイントとか、レンズとか、合成技術とか。
巨大スタジオに作られた遠景など、もはや現実にある街と言われても信じるレベル。
これらの神業レベルな、技術としての素晴らしさの方がよくわかりました。
俳句みたいなもの
映画におけるポエムの状態。
各シーンが提示されて、それは装置も衣装も極めてコントロールされており、けれどこれだけでは成立せず、それが並んではじめてある感情に達する。
ワンシーンワンカットだからこその、カット跨いで繋がってるものが出てくるときのハッとした感じ。
映画はやはりスクリーンと対峙、なんだな。
しかしもやのかかった空の色の美しさよ。
静的な映像と心地よい音楽とともに・・・
人類の悲哀を扱っているけれど、これは明らかに心地よい何かをつくり出そうとしている作品だ!とエンドロールで心地よく目を開けた自分がその策略にまんまとハマってしまったことを悟ってそしてまた心地よい気分になるのでありました。
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