劇場公開日 2020年11月20日

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「動く絵画、世界の再創造、人間観察、刹那と無限。」ホモ・サピエンスの涙 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0動く絵画、世界の再創造、人間観察、刹那と無限。

2020年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

知的

恋人たちが廃墟の上空を漂うシャガールの「街の上で」など名画の数々が引用され、ワンシーンワンカットの完璧な構図と統制された色調はまさにムービングピクチャー(動く絵画)の味わいだ。一見野外での撮影に思えるシーンさえも巨大スタジオ内にセットを組み、模型やマットペイントで奥行きある背景を作り出すロイ・アンダーソン監督独特の手法は、自らの手で再創造した世界をフィルムに収めることへの執着を感じさせる。

実物大の箱庭とでも呼べそうな舞台で断片的に繰り広げられる人間の悲哀やささやかな喜びを、超越者のごとき視線で観察している趣さえある本作。スウェーデン語の原題は「無限について」を意味し、あるシーンでは男が女に「すべてはエネルギーであり形を変えても総量は変わらず、僕らのエネルギーは数百万年後に再び巡り会う」といった趣旨の話をする。宇宙のスケールから見れば人の生は一瞬だが、そのはかなさをいつくしむ愛がある。

高森 郁哉