劇場公開日 2019年11月30日

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「帯に短し、襷に長し」台湾、街かどの人形劇 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0帯に短し、襷に長し

2019年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

露天において少人数の客の前で行う、ちょっと昔の芸能。
この映画のヒットで、本国では人気が復活したそうだが、こういう芸能がすたれていくのは時代の流れだろう。

終映後のトークによれば、見かけによらず、操作は難しいらしい。
常に立てた状態で、適宜、動きをストップさせながら、“人間”に見えるように動かす。“猿”のように揺らしてはならない。
人形を取り去って、“手の動き”を映すシーンがあるが、「なぜそれで、その人形の動きになるのか?」と思ったくらい“謎”である。

要するに、すたれさせるには惜しい、高度な芸能なのだ。
今では、“芸術”として再評価され、公的機関のイベントを中心に、外国にも行って公演している(陳錫煌ではないが、「いいだ人形劇フェスタ2018」にも来ているようだ)。

それにしても、事情が説明されないことが多くて困る映画だ。
最初の子であった主人公が、母の姓を嗣いだので、「父との葛藤」が生まれたとは何のことか?
一番弟子が後継者に指名されず、伝統を継ぐ意欲を失っているのはなぜか。
また、“反共抗露”の宣伝に利用されたとか・・・。
何だか、さっぱり分からないのだ。

映画のラストでは、じっくりと一つの演目を見せて、楽しませてくれる。
“台湾語”でないと“感じが出ない”そうだが、1980年代までは学校やメディアでの台湾語の使用は、禁止または制限されていたらしい。
よって、「今では台湾語を分かる人も減ったので」ということで、台詞のない聴覚障害者向けの演目である。

露天で演じるには高度だが、劇場でやるにはスケールが小さい(小さくて良く見えない)という印象だ。
「帯に短し、襷に長し」の、存在意義を主張しづらい「街かど」の芸能だった。

Imperator