「バージョンアップ」ロボット2.0 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
バージョンアップ
タイトルの2.0は大規模なバージョンアップの代名詞、人や物がネットに繋がる新時代のきっかけとなった2005年ごろのWEB2.0が有名であろう。本作もスマホ依存を徹底風刺しているから意味深い。いきなり首つりだし、バードマンが平将門の悪霊みたいでホラーに路線変更かと落胆しかけていたのだが、バシー博士の説明では生物のもつオーラ、負のエネルギー、即ち第5の力が生み出した怪物という。素粒子物理学では電磁気力、弱い核力、強い核力、重力の4つを万物を結びつける基本相互作用と言っています、ところが最近ハンガリーの科学者がベリリウム同位体の放射性崩壊の異常を観察し第5の力の存在を示唆する論文を科学誌「Nature」に発表しています、この第5の力を媒介する未知の素粒子を暗黒光子(ダークフォトン)と呼ぶようです。なんと荒唐無稽に思えたバードマンが最新科学に裏打ちされていたとは驚きです、もっともらしい嘘をつくといったSF映画の真骨頂ではないですか。まあ、こじつけなのは百も承知ですが魔術や怨霊に逃げない遊び心が素晴らしいですね。
内容としてはやたら長いオープニングクレジットに焦らされるしヒッチコックの「鳥」に似たサスペンスタッチや街を襲う怪鳥が「ラドン」にも見え既視感満載、ゴーストバスターズもどきの新兵器で一件落着かいと気落ちしていたら、壮絶なリベンジマッチ、巨大アイアンマン(自称)やアントマンもどきまで登場、2.0どころか3.0までバージョンアップするサービスぶり、「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」ではないですがバードマンの弱みを突くとは、2.0の悪知恵には脱帽です。
今回登場するニーナ(といってもロボット)もすこぶるセクシーでキュート、相変わらずの藤岡弘似の中年親父と美女コンビはインドならずも中年親父の夢というか妄想に応えるお約束なのでしょう、お約束と言えばボリウッド恒例のダンスシーンはどうしたのかと思いきやエンドロールでたっぷり披露してくれました。深遠なテーマとおふざけの交錯した妙ちくりんな映画ですが数学に強くて信仰心の厚いインドならではの作品とも言えるでしょう。