「もったいない。」しあわせのマスカット SUZさんの映画レビュー(感想・評価)
もったいない。
JALの機内上映で観た。搭乗時間の関係でこれしか選択肢がなかった。岡山の和菓子屋が作って、岡山に何故かあるカーリング場を取りあげ、岡山名産のマスカットを育てる、岡山ファーストの映画だ。この飛行機の行き先が岡山ならば、舞台のひとつである源吉兆庵に寄って和菓子のひとつでも買って食べたかも知れない。しかし、残念ながらこの便は東京行きだ。
いろいろ言いたいことがあるが、ひとつに絞ると、コケ過ぎ。とにかく主人公がよく転ぶ。ハウスの中でお辞儀しても転ぶし、ハウスから追い出されても転ぶ。工場見学に来た小学生の前では、バランスを崩して押していたバケツぶち撒ける。「いや、カーリング無理じゃね?」「復帰しても姉に迷惑かけるだけじゃね?」そう感じてしまうと、終盤の主人公の葛藤に気持ちがついていかなくなってしまった。
怪我でスポーツを断念した元有力選手が別の世界に生きがいを求めるストーリーは他でもよく見かける。漫画の「重版出来」なども同じプロットだ。しかしながら、各話の掘り下げ方が違いすぎる。和菓子屋や葡萄農家にきちんと取材したのだろうか?そしてそれ以上に気になるのが、主人公のバックボーンたるスポーツの経験が全く活かされていないことだ。少しは調べたのだろうか? 知性、冷静さ、体幹、バランス、繊細さ。主人公はカーリング選手に必要な要素を何一つ持っていないように見える。体力と根性はあるのだろうが、この2つだけならば、ほぼ全てのスポーツで成り立ってしまうだろう。
カーリング場はたまたま岡山にあったのかも知れない。しかしカーリングは「氷上のチェス」と言われる個性あふれる競技だ。そんなコマを手にしながら活かさないなんて、なんて勿体無い事をしてるんだろう。