「驚きの36年前の前作の遺産の引継ぎ」トップガン マーヴェリック Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
驚きの36年前の前作の遺産の引継ぎ
総合:70点 ( ストーリー:50点|キャスト:75点|演出:75点|ビジュアル:90点|音楽:75点 )
第一作から実に36年もたってから制作・公開される2作目とは驚く。どれだけ前作の後を引き継いだ内容になるのか、時代の流れをどう受け止めるのかと興味をそそられた。
実際に挿入曲「デンジャーゾーン」を背景にしたF18スーパーホーネットの飛行、昔の仲間、GPZ900、ポルシェ、砂浜で球技と、前作をそのままなぞったかのような場面も多数入れられている。
冒頭のマッハ10の実験機の場面は、『ライトスタッフ』における実験機で世界で初めて音速を突破した実在のチャック・イェーガー操縦士を思い起こさせる。当時の空軍の規律は緩くてある程度はやりたい放題だったという噂もあるが、21世紀でも規律は緩めのようだ。
訓練の場面は映像にかなり迫力があったし、珍しく劇場まで出向いて4Dでの鑑賞だったのでそれに拍車がかかる。次々に訓練が進むので緊張感が途切れないのも良かった。
そしていよいよ実戦なのだが、勿論迫力があって良かった。だが、ここで主人公のトム・クルーズ演じるピート・ミッチェルが撃墜されてしまうのはちょっと驚いた。しかも部下が命令無視して戻ってきて彼も撃墜されて、その2人が脱出した後でどうしたことか簡単に合流出来るのは驚いた。さらに驚きは続き、敵の追撃部隊をあっさりと振り切り、大した問題もなく敵基地に潜入できたうえに、敵の発進準備の整ったF14トムキャットを盗めてしまうのには驚きを通り越して呆れてしまう。
そう、実は革命が起きて強硬な反米になる前のイランは親米国家で、アメリカから当時世界最強の制空戦闘機であるF14を輸入した唯一の国であり、未だにF14を現役で運用する世界で唯一の国である。前作で主人公の愛機として活躍した、個人的にもジェット機で一番好きなF14が登場するのは嬉しいのだが、これはいくら何でも現実感がない。しかもそのF14が完全に時代遅れ扱いなのは、採用から50年以上も前の戦闘機だから仕方ないとしても物悲しさもある。最後の展開は強引すぎていきなり物語の質感が下がった。とはいっても可変翼を持つF14の現代でも通用する優れた機動性を見せつける場面もあった。
海軍のF14は制空能力が高くても金がかかりすぎるので、続編が作られるずっと前の2006年までに現実世界ではさっさと退役させられてしまったが、F14とほぼ同時期に登場した空軍のF15イーグルが改良を受けながら未だに現役である。海軍の後継機F18は万能性はあっても制空能力の不足もあって、F14の優れた制空能力を惜しんで早すぎる退役に批判もあったことだし、無理な話なのはわかっていてもやはり最初からF14が現役であってほしかった。逆に隠密性能を持つ最新のF35ライトニングIIを使用する脚本だと、簡単に任務を達成してしまうし格闘戦も無いだろうから、脚本としては盛り上がりに欠けるのだろう。
これは36年も次回作を作らず待たせすぎたがゆえに時代が変わってしまったから起きたことであり、やはりもっと早く、少なくとも21世紀初頭までに次回作を作らなければならなかった。そうすればF14が現役で登場出来てその引退に花を揃えることも出来た。