「立体音響になった「デンジャー・ゾーン」にありがとう。」トップガン マーヴェリック 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
立体音響になった「デンジャー・ゾーン」にありがとう。
冒頭からオリジナル『トップガン』の完コピに始まり、主題歌「デンジャー・ゾーン」の入り方まで同じ。しかしIMAXだと立体感のあるミックスになっていて、2022年にグレードアップした「デンジャー・ゾーン」が聴けることに興奮したし、爆笑もした。内容的には予定調和に継ぐ予定調和だが、それもオリジナルを踏襲するなら必然だし、予定調和のエスカレートが生み出す満を持してのF14大活躍にも興奮したし、爆笑もした。
ただ、トニー・スコットという人が過剰な表現で映画を刷新していった流れにある作品ではなく、トニー・スコットが生前「続編も同じ映画にはしない」とコメントしていたことを思うと、伝統芸の継承以外の、ほかの可能性も観たかったという気持ちはある。
とはいえ、観客が観たいものを提供するという敏腕プロデューサー兼命知らずのアクションスターであるトム・クルーズの狙いがみごとに的中したことは、この映画の受け入れられ方を見れば明白であって、ひとつの続編の理想の形ではあるのだろう。
ただ、国際法を無視して軍事行動を起こすアメリカの身勝手さまで踏襲するどころかエスカレートさせることはなかったのでは、とは思ってしまう。映画は映画として楽しんだが、オリジナルの時から気になっていた部分だけに、そこは上手くアップデートしてほしかったとは思いますよ。
確かに伝統の継承や前作ファンの機嫌取りだけでなく今の時代のアメリカ軍事方針の新しいあり方を示してもらえたら尚良かったと思う。いい加減rogue nationとかテロとの戦いとかで戦争するとか今の時代に相応しくないしね。流石の米国もロシアと直接戦ってないし。
考えずに行動せよって勢いで戦争したらいままでの米国と変わらない。むしろ考えずに感じろと言いたい。
それにしても他になにか戦う相手のネタは無かったのか?それに世界が平和になるに連れ戦争を描く映画は今後作られることが少なくなっていくとは思うけど。