劇場公開日 2020年7月17日

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「劇場を劇場で観る幸福」劇場 まつこさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5劇場を劇場で観る幸福

2020年7月19日
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鑑賞方法:映画館

待ってたよ…本当に待ち侘びていた公開。
終わった後の余韻がやばい酷い。この映画は映像制作や、それ以外でも制作や物作りの仕事をしている人達はボロ泣きすると聞いていて…。あまり該当はしないわたしでも、細々と号泣してしまったから、そうだろうなぁと思った。何か、あまり感情を入れ込みすぎて観ると心と頭がおかしくなっちゃいそうだなと思って、映画だ映画とたまに言い聞かせながら観てたけど結局色々辛かった。
私はものづくりに関してはあまりそちらの目線ではコメント出来ないので、恋愛や人間関係に関して言うと…。男や女に対して、恋愛感情や愛情や情が芽生えてしまった時ってこんなにも人はまともな考えが出来なくなったり正当な脳みそが壊れてしまったりするんだろうと思った。そもそも正当って、普通って、平凡ってなんだろうと思うけど。人は人に対して、特に幸せになって欲しい人に対して、好きな人や大事にしたい人との付き合い方や接し方や関係性はこうあるべき、そうすることが幸せだと言ってくるし、本当にそれが正しい事が殆どだけれどさ、結局はその人の脳に潜り込んでその人になって考えられないんだから正当や真っ当な意見はその人の考えを変えられないことの方が多いのに…なんてことを思いながら見ても、この劇中の沙希と永田、2人の関係性は、この2人の人間性や人柄を知れば知るほど観客の立ち位置からみて辛くなっていく…それもどんどん。「頭のいい友達には別れろってすぐ言われる、離れた方が楽だって思ってはいるんだ」という歌詞の歌(峯田和伸とスカパラの「ちえのわ」って曲)があるけど、まさにそれなんだよなぁ。離れられれば楽だし、それが頭のいい考え方だって、そりゃあ自分から数歩離れたところから見ればすぐにその意見が出てくるんだけど…それを全ての人間が上手く出来てたら、世の中に起きてる男女の色々な問題や事件は起きないよ。つまり一生かかっても医学が進歩しても、解決出来ない問題なんだなぁ、と思った。そこに2人の将来や夢が絡んでくると更にだね。
それにしても行定勲監督は相変わらず良い。始まりの仕方も終わり方も、話の構成も、カメラワークも、音楽も、作品全体の雰囲気も、何もかも良いし、そもそも私の好みでもあるし。自分の好きな人が作るものや音楽や描く絵などって好きになってしまいがちだけど、まさに監督自体も好きだから、ってのもある。
その中でもピンポイントなとこをピックアップすると、師匠である岩井俊二監督が言ってたように、キャスティング力がすごい。それプラス俳優の能力を引き出す力がすごい…。この監督の手によって、世の中の人達が引き出せなかった俳優の魅力がどんだけ引き出されて来たか。「GO」の窪塚洋介、「パレード」の林遣都、「真夜中の五分前」の三浦春馬、「リバーズ・エッジ」の吉沢亮とか(まだまだ沢山居ると思うけど特に色濃く印象に残ってるのはこの人達。まだ観てない人は観て欲しい傑作)。「劇場」に関しても、松岡茉優はもう誰もが知っての通りの演技力で、めちゃくちゃ沙希という人間を体現していていて脱帽したけど、山﨑賢人に至ってはまじで凄いな…と思った。こういう役をやり遂げて、しかも成功させてこそのカメレオン俳優と呼ばれるべきだよなーと。最近はちょっと変な役や狂った役を演ったら、それが成功しようがしまいがすぐにカメレオン俳優なんて安易なキャッチコピーを付けがちな風潮やメディアの流行りがあるけど、山﨑賢人に関してはここから俳優としてのキャリアが始まってくんだろうなぁと。吉沢亮もまさにそうだったし、どっからその人が一皮向けたと思うのかは人それぞれの価値観とか経験値に基づくとは思うけど、私が思うのは、その人を見る目が変わったら、てのはひとつのポイントかなぁ。見る目変わったよ。それも含め、この作品の山﨑賢人は最初から最後まで良かった。狂った役や猟奇的な殺人鬼をやらせた訳じゃないのにそう思わせられるのは監督と本人、その他演者やスタッフの為せる技すぎる。奇跡が起きた感じでした。
編集の仕方も良かったなぁ〜全体的にではないけれど、冒頭の永田の今までの演劇生活をおさらいするところはもう「GO」を彷彿とさせる感じで、ゾクゾクした笑。またGOみたいな作品も作って欲しいなと思ったり思わなかったり。
んでもうこれは本当もうまぁそんな作品多々ありますしと思う人多数かと思いますが、しかも演劇の映画なんでそりゃあそうなりますし、又吉原作ですしと思う意見も多々あるかと思いますが…。下北が舞台ってとこが…。たまらんよね…各種劇場もちょいちょい出てくるし、名ロケ地もちょいちょい出てくるし、井の公も高円寺も出て来るし、それを行定監督作品でそこメインで作られてるのが良いですねぇ(ミーハー過ぎてすみません)。まさに、俳優・●●×監督・行定勲!みたいな騒がれ方と一緒で、行定勲が撮る下北沢!!ってところが良いんだよねぇ…。下北ではないけど短編映画の世田谷ラブストーリーもまた見たいなぁ。いつでも見れますが、昔トリウッドで公開されたそれはとても良かったし◎(今作も浅香航大出てて世田谷ラブストーリー思い出しちゃうし)
そういえばこないだラジオで、ゲストが行定監督とキングヌー井口さんが出てて2人でトークしてたけど、井口さんの小峰へのキャスティング理由やきっかけ、流れも、良いなぁ〜と思った。監督は、アーティストだのアイドルなど関係無しにぴったりのキャスティングしてくるし、ただそれだけで終わらせないからめちゃくちゃかっこ良いですねハイ。
作品のラストも、良かった。色々言いたいけどラスト箇所を言い過ぎるのは下衆なので言わない。でも映画好きな人と少しだけ話したい、特に行定勲好きな人と笑笑。
「劇場」を劇場で観るのが難しいし、そもそもごっそりと上映館を減らした状況なのでしゃーなしですが、私は今作を映画館で観られた事にこの上ない幸福を感じました。
だから映画を観るのは辞められないね。今回も最高体験だったよ。

まつこ