「驚鰐! 潜慄! ハリケーンゲイター!」クロール 凶暴領域 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
驚鰐! 潜慄! ハリケーンゲイター!
カテゴリ5のハリケーンに見舞われる
田舎町の我が家へ父の様子を見に来た
主人公ヘイリー。だが父は浸水し始めた
地下で大怪我を負って気絶しており、
さらにそこには2人の脱出を阻むかの
ように、凶暴なワニ共も潜んでいた――
ハリケーン&ワニワニパニックという恐怖の
Wパンチが味わえる欲張りパニック映画が登場。
監督は『ハイテンション』『ヒルズ・ハヴ・
アイズ』等のアレクサンドル・アジャ、
主演は『メイズ・ランナー』でも共演した
カヤ・スコデラリオとバリー・ペッパー。
考えてみれば僕は、ワニが登場するパニック
映画を全然観たことがない。思い当たるのは
唯一『イレイザー』のワニ襲撃シーンくらい
だけど――あの映画はたしかワニじゃなく
シュワちゃんが人間を抹殺してゆく恐怖を
描いたパニックホラーだったし――あまり
過去作と比較できないけれどレビューします。
...
暴風雨接近で住民が避難し、ほぼ無人と化した街。
浸水でじわじわ水面上昇し続ける中、主人公は
腰を屈めないと進めないほど低い地下で暗がり
に潜むワニ共と鬼ごっこする羽目になる。
巧いのはこの“浸水”という要素を時限サスペンス
として活かした点。「早く脱出しなきゃ溺れる!」
というだけではなく、浸水すればするほど視界は
狭まり動きも制限される。だがその一方、水場は
おワニ様のテリトリー。浸水するほどワニ共の
動きは素早くなり、潜伏場所も増えていき、
“いつ襲われるか分からない”という緊張感が
ずんずん高まっていくという仕組みが見事。
主人公も少しずつ行動範囲を広げていくが、
どこへ行こうが水場だらけのワニだらけなので、
移動するたび新たなワニ出現にビクつく羽目に。
暗い地下から明るい開所へ移動するに連れて
ワニの数も増え、舞台装置も段々と大掛かり
になっていくので最後までテンションが持続。
そしてさすがはA・アジャ監督。
ワニもゴア描写も出し惜しみナシ!
序盤からワニが出現するし、主人公2人も
しっかりがっしり噛まれるし、たまに登場する
他の住民なんて基本的に速攻でガブガブされる。
1人なんてバーゲンセールの主婦たちに
襲われるブランド服の如く四方八方から
グイグイと引っ張られ……ヒ、ヒイィィ……
(まあこれでもアジャ監督にしては
表現がマイルドな方なんですけどね)
...
死闘の中で描かれる父娘のドラマも好き。
水泳選手としての自分の才能に
限界を感じている主人公ヘイリー。
父はヘイリーの才能を信じて幼少の頃から
彼女のコーチをしてきたが、そんな父の
期待も今は重圧。母との離婚も重なり、
近頃は父とは疎遠になってしまっている。
だが、久しぶりに再会した父とサバイバルに
挑む内、ずっと重圧だったはずの父の期待が、
自分の強さを信じるきっかけを与えてくれる。
「俺は気付いたんだ、『この子は戦士』だと。」
父の期待は、彼が勝手に寄せた期待ではなく、
娘がかつて見せた強さを信じてくれてのもの
だった。父の娘への想い、母との離婚に
まつわるヘイリーの秘めた気持ち、売却
を考えていた我が家を売れなかった理由、
それらが語られるうち、疎遠だった
父と娘が再び家族として繋がってゆく。
あの最後のカットが泣ける。娘を信じ続けた
父の気持ちがめいっぱいに詰まっているようで。
...
主演カヤ・スコデラリオが、ひたすら這いずり
回ったり潜水したりするハードなアクションで
熱演。彼女は目力が強くてステキ。目力の強さ
で言ったらもう『呪怨』の伽椰子さんにも
負けないので今後はカヤ子さんと呼びます。
(ちゃんと褒めて)
父デイヴを演じたバリー・ペッパーも、
出演してると嬉しくなる名バイプレイヤー
になってきましたね。大御所俳優みたいな
重量級ではないが、精悍で優しい古参兵
みたいな雰囲気で良いよね。
あとワンコのシュガー。
『ジョン・ウィック』よろしくワニ相手に
勇猛果敢に飛びかか……ったりはしないし
ワニにも怯えっぱなし。だけど居場所を
知らせたりワニ接近を警告したり、
地味にナイスサポートでした。
映画の犬ってやたら強くて勇敢だけど、
現実はこれくらいだよねえ、きっと。
...
以上!
ちょっとラストがあっさりめだったりするが、
ノンストップで危機が襲い掛かり、最後まで
飽きさせない出来で楽しめました。
観て損ナシの3.5判定です。
<2019.10.14鑑賞>
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余談:
こんなレビュータイトルにしといて
なんですが、『シャークネード』は未見です。
WOWOWで観ました。アジャ監督だったんですねコレ。
面白かった。
作品のチョイスが似てるのは前から感じていましたが、こういう作品も押さえてしっかりレビュー書いてるのは流石ですネ。