「美しい画面とカルトの恐怖は新鮮。だけれど…」ミッドサマー すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
美しい画面とカルトの恐怖は新鮮。だけれど…
◯作品全体
アリ・アスターの前作『ヘレディタリー』は家族に降りかかる災厄が描かれていたが、本作は主人公・ダニーたち「お客さん」と同じ視点でカルト集団の奇妙な儀式を見学するような立ち位置で、奇妙さにスポットを当てる時間が長い。確かに宗教的な儀式の異質さは独特な動きの間と、その間が作る緊張感が肝心だったりするから演出としては間違っていないと思うのだけど、予想通り気持ち悪い儀式を予想通り主人公たちの命を狙う最終目標のための前座として映されてる感じがした。
その気持ち悪さが好奇心となって見ている間はカルトホラーとハイキーな画面のギャップに惹きつけられるんだけど、セックスシーンとかダニーと一緒に絶叫するところとかは、ちょっとその方向性がギャグっぽくて、『ヘレディタリー』の終盤みたいに没入感が抜けてしまった。
ダニーの物語としては、冒頭で家族を失う冬の景色があって、最終的にホルガ村で新たな家族を見つける夏の景色で終わるストーリーがある。クリスチャンという家族候補を切り捨てて迎えるラストは新たな始まりでもあるけど、本当の家族やクリスチャンと決別する終わりの物語でもある。ここら辺の構成はすっきりしているけれど、本作の本質はカルトホラーなので「宗教オチエンド」みたいな感想しか浮かんでこなかったのが正直なところだ。
カラッと晴れたようなハイキーの画面と白色の装束が、カルト集団の闇を包み隠す。画面から滲む狂気は今まで見たことのないホラーで最初は没頭できたが、主人公たちの命を狙うカルト集団の奇妙な儀式やスプラッターの描写は少し古典的。個人的にこのアンバランスさが作品の魅力とは感じられなかった。
◯カメラワークとか
・村に入るまでは凝ったレイアウトが多かった。ダニーが仲間にスウェーデン行きを告げるシーン、入室したダニーをテレビ画面の反射で映してるのが面白かった。疎外感というか、男友達からしたら望まない来客が来たという描写。
村に入るシーンではカメラが縦に一回転。車が天を走っている。一般社会の常識とは異なるカルト世界への入り口。
◯その他
・セックスシーンの中途半端なギャグっぷりはなんだかなあって感じだ。お母さんぽいのが歌で介入してきたり、クリスチャンのお尻押したり、妨害行為をしてくるの嫌すぎる。『ヘレディタリー』の天井に張り付くお母さんみたいな、ギャグへ急ハンドルきるのやめてほしい。
・ミートパイに毛が入ってたところ、死んじゃった二人の人肉ミートパイなんだと思ったけど違った。
・完全なる個人的好みだけど、生贄のために狙われるみたいなホラーはもうお腹いっぱいだなあと思ってしまう。そこに至る過程は作品ごとに多種多様なんだけど、結局それかってなってしまう。カルト集団によって良いように扱われるその後のダニーをラストにした方が、生かされたまま殺されてる感じがして怖くないですか?