「映画を見ての率直な感想」ミッドサマー あさんの映画レビュー(感想・評価)
映画を見ての率直な感想
まず見終わった後、個人的にこの映画がどういう風に映ったかと言うと、
「主人公にとってムカつく奴が非日常によってバンバン死んでく映画」でした。
普通の作品は日常から非日常に移る事で緊張感や居心地の悪さを感じるのですが、
この映画は真逆で、日常がとても居心地悪く、非日常でそれが解消されていきます。
物理的に、死という形で。
異常事態によって失うかもしれない大切なモノについて緊張するのではなく、
主人公には大切な関係はほとんどなくて、失った方が好都合なモノばかりです。
例外として、恋人だけは唯一「大切かもしれない」存在ですが。
この作品の序盤、日常のシーンは画面的にも暗く、主人公のやる事なす事に対しての
周囲の空気感というのはかなり居たたまれないものです。
しかし、非日常である村パートにいくと、明るく開放的な画になり、
不気味で残酷な事が起こりながらも序盤の鬱屈とした人間関係の空気から解放されます。
この、日常に適応できない人間が非日常によって妙な安息を得て、
しがらみから解放されていくという感覚は新鮮に感じました。
ただ問題は、唯一主人公にとって大切かもしれない恋人との関係です。
この大切な関係というのはかなりグレーなもので、
仲は拗れに拗れていて本当に大切なのかどうかもイマイチ分からない関係です。
話が進む中でこの関係は細かい食い違いで更に拗れつつ、
クライマックスで決定的な亀裂が入ります。
この恋人に対してだけは「殺さない事も出来た」というのがポイントで、
もし最終的にそれでもまだ大切な存在であったのなら、生かす事も出来た。
その選択権が主人公にあった。
個人的にこの映画であまり恐怖を感じないのは、村のルールが基本的に
主人公にとって有利に働くものだったからかなと思います。
これによって、主人公を不愉快にしていた日常は
グレーだった関係含め全てが村の異常性によって排除され、排除し、
ニッコリと笑って物語は終わりです。
ただ、この笑ったという所が個人的に引っかかる所ではあります。
村の人間達は信仰やルールに則った自死、殺人を行っているのですが、
ダニーの最後の決断は村のシステムを利用した個人的な感情が動機の殺人です。
最後、村の人間は焼ける村人に同調して嘆いていますが、主人公は笑います。
村に適応したのではなく、憎しみを晴らせたという感情が表に出てしまいます。
日常に適応出来ず、しがらみから解放されたダニーではありますが、
村の異常に適応したわけでもない、というのがここからの地獄を思わせる所かなと思いました。