「A24はトップが交代して・・・」ミッドサマー 蛇足軒瞬平太さんの映画レビュー(感想・評価)
A24はトップが交代して・・・
勝ちに不思議あり、
負けに不思議なし。
は、
故野村克也氏の言葉。
映画の興行に当てはめると、
大ヒットに不思議あり、
惨敗に不思議なし。
本作のコロナウイルスにも負けないヒットに関しての不思議を2点ほど。
1 疑い
現実の世界から一周まわったセカイ。
ヘレディタリーを観た時に、
近々、こういう作品を撮るんだろうという予感はしていた。
周りの20代前後のグループが、
ケラケラ笑いながら観てたので、
健全な感覚に少し安心した。
絶望の淵に立たされた人にとって、
気にもとめてくれない法律や、
見て見ぬふりをするルールなんて、
追い込まれる素材に過ぎない。
全員でこちらを気にかけてくれる人たちが、
独自のルールで集団生活をしていても、
合法ではない死生観を持っていても、
目の前の現実よりも、
そちらに希望を見出すケースがあっても不思議ではない、いや不思議、ん?不思議ではない。
ひと昔前までは、少なくとも日本の一部の村社会では、子どもに対しても普通に行われていた風習。
と考えれば一定の人数の共感するであろうひとたちはSNSの騒がれ方に興味シンシンで映画館に行く。
2 悟り
珍品(セカイを内容にしている)は忘れた頃にヒットする。
ベルイマン(ベルイマンはまともで、別枠ですが、一応、作品の性質上、入れておきます)パゾリーニ、ホドロフスキー、リンチ、トリアー、ハネケ他、一定の周期で論理的に理解不能な、予想外の珍品がヒットするタイミングがある。
ヒットの大凡の流れは、
意識高い系映画→スピリチュアル系映画
→宇宙難解系映画→おバカ系映画→ウェルメイド系映画→意識高い系・・
と流行り廃りを繰り返してきた。
そんな流れの中でアクション大作がブームになり、ヒューマニズム映画が騒がれ、
そして世界が疲れてる時にスピリチュアル系珍品映画がブームになるような気がしないでもない。
最後に。
古今東西で様々な人々に石を投げられ、
足蹴にされてきた【イノセンス】を、
ドアの向こうから声が聞こえてくるような映画館ではなく、いわゆるメジャーといわれるようなシネコンでエンターテインメントとしてアップグレードさせる体に持ち込んだのは一定の評価があってもいいと考えます。
最後の最後に。
上記の監督たちよりは、純粋マジメ野郎または、それを装う事に長けた人なんだろうなアリ・アスター。
A24はトップが交代して、
カロルコやミラマックスのようになってしまう気配ですが、もう少し踏ん張って欲しいです。
マルパソのようにファンドとは一定の距離を置いて、なおかつ集金力がある広告塔のヒーローが必要なんてかなり現実的にはハードルが高いでしょう。
ビョルン・アンドレセンにおどろきました。