「監督のインタビューを見て30倍怖くなった。」ミッドサマー えびせんさんの映画レビュー(感想・評価)
監督のインタビューを見て30倍怖くなった。
最後のダニーの笑顔について。
鑑賞時の印象としては、ホルガの考え(死は救い)を受け入れることにより恋人を殺した罪悪感から解放された笑顔かと思った。
また、家族の死についても考え方が変わった部分があるのかと。
(あと少しだけ、ホルガ民のあまりの泣き芸に笑ってしまったのかとも思った…
私は笑ってしまった。こいつら顔は嘆いているけど涙出てないなというのもあって。
クリスチャンとマヤの行為を見た後のシーンもそうだけど、ホルガの人たちの「共感」は
人ではないものが人の行いをただ真似ているようで不気味さがある)
私は、何言っててもいざ死ぬとなったら怖いよなと思ったし、本編でも志願して生贄になったホルガの男性2人が、炎に包まれる直前には怖がり逃れようとする素振りを見せていた。
なので、『ダニーはホルガの考えを信じた事で救われた。ただし自分の番がくるまで……』という後味の悪い終わり方かと思った。鑑賞直後は。
しかし鑑賞後にアリ・アスター監督のインタビューを読み、最後のシーンは観客にカタルシスを感じさせるための物と知った。
私はカタルシスを感じることはできなかった。
「不誠実」という罪と「死」という罰が釣り合っているとは思えなかったから。
(マヤとの行為もドラッグを飲まされた上でだったし)
しかしダニーの憎しみは、クリスチャンとマヤの行為を見た事によるものだろうか。
私はそれよりも、ホルガに来るまでの生活の中で積み重なったものが大きいと思う。
家族を一度に亡くしたダニーの悲しみは、多くの人は一生味わうことがないほど深い悲しみだと思う。
それ以降のダニーの生活はずっと「非日常」で、ダニーの非日常に踏み込もうとせず「日常」を続けているクリスチャンから、他人事というのが透けて見えて、ダニーを傷付け続けていたのではないだろうか。
ではクリスチャンはどうすればよかったのかというと、正直、1年も引きずらずに(事件が起こる前に)別れておけばよかったとしか言いようがない。
別れを先延ばしにしたのはダニーへの気遣いじゃなくて”別れる”という大仕事が煩わしかっただけ。
ダニーが家族を亡くし、同情から寄り添おうとしても、心が伴わないので傷付けるだけで、結果死刑にされるという…。
(しかしそんな不誠実な恋人でも、ダニーにとって、家族を亡くした直前には居ないよりはマシだったと思うんだよな。誰でも良いから縋る先が必要だったと思う。なので、結局ダニーはより良い依存先(ホルガ)を見つけたからクリスチャンが要らなくなっただけで、なんとも自己中心的にも思える…)
私はダニーに共感しきれない、この映画だと死罪になるべき側の人間なんだと思う。
そう思うと恐ろしくて、映画本編の不気味さなどは全て吹き飛んでしまった。