「恐竜とは、都合の良いペットである」映画ドラえもん のび太の新恐竜 よもぎさんの映画レビュー(感想・評価)
恐竜とは、都合の良いペットである
ジャイアンとスネ夫に見栄を張るために恐竜が欲しい。
そんな動機から恐竜の化石探しを始め、偶然そこらへんに落っこちていた丸っこい石をタイム風呂敷で戻してみたら恐竜の卵だった。
孵してみたら可愛いので飼う事にした。
大きくなってくると手に負えなくなったのでタイムマシンで太古の地球へ戻って「捨てた」。
「恐竜」や「恐竜2006」のピー助及び今回のキューとミューに対するのび太君一行の仕打ちは個人的には上のような感想です。
私は「恐竜」はそのように見ていたためどうしても好きになれず、今回の「新恐竜」は「ドラえもんの恐竜映画」へのイメージが変わる事を期待していたのですが、まさか全く同じ焼き直しとは思いませんでした。この展開はドラえもんスタッフの中では鉄板の感動ストーリーなんでしょうか?
恐らくは災害や事故で親を亡くした赤ちゃん動物を保護して育て、大きくなったら野生に還す慈善団体さんの活動なんかをモデルにしようとしているのかと思いますが、とんでもない。
のび太君達のやった事は見栄張りたさに虎やライオンの赤ちゃんを手に入れ、子供の内は可愛いがっていたものの大きくなったら手に負えず、「野生で暮らす方が幸せだろ」と決めつけてサバンナに捨てに行くゲスな金持ちと同じですよ。
ペットは飼うなら死ぬまで責任を持つ、持てないなら飼わないが鉄則です。
可愛い期間だけ可愛がって、それが過ぎたら捨てても許される。理想的な愛玩動物です。
そりゃあ、そんな事言ってたらストーリー始まんないですから飼うのはしょうがないですけど、捨てる事が正しいみたいな描写は何とかならないんですかね。
「責任を果たせない代わりに全力で君たちの仲間を見つけて一緒に暮らせるように仲を取り持つ。野生で暮らせるようにエサの取り方や巣の作り方、身の守り方の訓練もしよう」くらいは言って欲しかったものです。
そしてお世話は超~楽。
生まれた直後から人間の言葉を半ば理解しているようにこちらの意を汲み、従順。たまに一瞬で解決出来る程度のトラブルを起こして「あぁ~お世話してるぅ」感を飼い主様に与えてくれる。
躾は怒鳴るだけで勝手に愛情に変換して影で努力してくれるドM。たまごっちより育成が楽ですね。
正直、キューとのび太君の間に友情が芽生える理由が分からない。
のび太君はダメダメなキューを怒鳴る事で優越感を得て、キューはのび太君に見捨てられたら生きていけないので依存しているだけじゃないでしょうか。
以上より、根本である「ドラえもんの恐竜感」が私には全く合わないようです。
ここまでなら星1どころか星ゼロなんですが、2を付けたのは恐竜との付き合い方以外のストーリー面が中々好みだったからです。
敵だと思ったら味方だったタイムパトロールのおじさんは中々カッコよかったですし、「タイムパトロールのお仕事」をここまでしっかり描いたものは余り無かったと思います。
ドラえもん映画のお約束、序盤に出てきた道具が終盤活躍する所も守られていましたし、クライマックスシーンも迫力がありました。
ただ、クライマックスに持っていく過程は雑でしたね。
特に気になったのはストーリー序盤から引っ張られ続けた「キューが空を飛べるようになる」事。
鑑賞しながら「これで特に理由無くクライマックスで都合良く飛べるようになったら冷めるぞ…」と思っていましたが、そんな感じでした。
わざわざ恐竜を双子にしたのも「可愛い」以外の必要性を感じられませんでした。
キューとミューの種族は元々単に滑空しているだけで空を飛んでいるわけでは無く(「どう見ても飛んでるだろ」ってのはアニメ的な演出のご都合だと割り切ります)、キューはそんな種族の中に生まれた「空を飛ぶ」鳥類への進化の兆しを持った個体という位置付け。双子にしたのはその種族従来の範囲で優秀なミューと、種族の範囲を超えて新たな一歩を踏み出すキューの対比のためだったんじゃないかと思います。
しかしながら作中では「優秀なミューと出来損ないのキュー」という表現ばかりで、尻尾が短い・身体も小さいとまるで発育不良児のような扱いのまま最後まで行きます。
多分、訓練中にのび太君が「他の皆は羽ばたいたりしていない!」ってギャーギャー喚いていたシーンがヒントのつもりなんでしょうけど、もっと身体の作りが鳥類に近いみたいな説明を入れるとか、入れ替えクレヨンで外に出た時にスズメとかカラスが飛ぶのを見て何か感じ取ったようなカットを入れるとか、やりようがあったんじゃないかと思います。
・ドラえもんにおける恐竜というテーマの扱い
=最早何の期待もしない
・ストーリーの大筋や核心が分かった時のインパクト
=結構好き
・ストーリーの整合性や演出
=よくこれでOKが出たなと不思議に思うレベル
まとめるとこんな感じですね。
来年の映画予告は何やら宇宙戦艦みたいなものが見えましたね。例年だと10月頃にタイトル発表ですが、今年は公開も遅れたのでまだ暫く先でしょうか。