「弱い者が損をする世の中・・・」ソワレ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
弱い者が損をする世の中・・・
最初はそれほど引き込まれなかったのに、高齢者施設の名称が「さくらの園」ということで俄然集中力が増してしまいました。老人に劇を教える?なんてわけがわからなかったのに、それで劇団を中心にした意味もわかる。『櫻の園』と同じく劇中劇があるのも意図したものなのだろう。「安珍・清姫伝説」にしても、2人がコインランドリーを待ち合わせ場所にしたものの帰ってこなかった翔太に対して怒りをぶつけるんじゃないかとも思われたが・・・
競輪やパチンコじゃ稼げないもの。逃避行中に2人でどっちが稼げるか?などと、スナックで働くタカラに対してパチンコをやってしまう翔太。最初は多分3万くらい勝ったんだろうけど、勝ちが続くはずもない。そんなことだから刑事に「かくれんぼ」なんて言われちゃうんだよな。と、逃げてる理由が性的暴行の恐怖から来るものだと知ってたはずの翔太すら、もはや現実からの逃避にしかなっていなかった。
痛さはわかってるつもりだった。しかし、施設で年金のために親を生かしておく奴もいるとか聞かされ、自分のやってきた詐欺の受け子のことも反省したり、一緒に逃げているタカラに対する思いやりが彼を変えた。父親が死んだから大丈夫だと思い、体を重ねようとするも拒まれたところが印象に残る。影絵よりも心に響いた。
一方、タカラの最初のシーンにおいても老女性が消えたりとか、何かと幻影を見ることが多い。恐怖の父親像、さらに優しそうな両親と自分の幼少期、そして翔太も。一人じゃ生きていけない自分。寝ている間にマニキュアを塗ってくれた翔太。ようやく心から笑えそうな気がした。こうやって笑うんだよ・・・
梅農園の夫婦もよかった。スナックもそうだけど、「駆け落ち」という言葉に弱いのか。よし、今度使ってみよう・・・あ、おっさんじゃ無理か。芋生悠さん、江口のりこの妹かと思ったよ。似てると思ったから優しくしたのかな?などと思いつつ、やっぱり最高だよ!2人とも。
間違えて、映画館の座席が前の方にしてしまったけど、最初の手振れ映像は見にくかったものの、海岸での思いっきり引き映像は前の方にして正解だと思いましたよ。そして希望の持てるラスト(ただし、翔太が和歌山に帰らなかったら蛇女になっちゃうかも)。ちょっとした仕掛けがまだあるんじゃないかともう一度確認しながら観たいと思ったのに、今日が最終日でした・・・マチネとソワレ、意味深だ・・・