「重く閉塞感が漂いますが、不器用な荒々しさがなんか気になる作品です。」ソワレ 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
重く閉塞感が漂いますが、不器用な荒々しさがなんか気になる作品です。
以前から興味があったのと、観た方の評判が良かった事もあり、観賞しました。
で、感想はと言うと…重い…重いなぁ
全体的に終始付き纏う閉塞感に気持ちがなんだかどんより。
様々な境遇の中、思いを断ち切るかの様に逃げ出す二人に希望が見えない。
だからこそ、捕まる事でしか活路が見いだせないからか、虚無感が半端ないんですよね。
むか〜し見た「サーティーン・ボーイ」と言うテレビドラマをなんか思い出しました。
刑務所帰りの父親に乱暴され、思い余って刺してしまった介護士のタカラと、役者を目指しながらもオレオレ詐欺に加担し小銭を稼ぐ翔太との二人の逃避行なんですが、二人が現場から逃げて、和歌山市内をあてもなく彷徨い逃げるのは、なんと言うか虚しくやるせない感じなんですよね。
その分先々での出会いというかドラマがあるけど、ちょっと薄いし少ない。
梅農家に頼み込んでのアルバイトなんか、もっと膨らませて良かったのではないかな。
またタカラがアルバイトをするスナックなんかもいろんなドラマがあると思うし、ドラマが生まれると思うから勿体無いなあ。
行く先々での人との出会いに悪い人もいるかも知れないけど、良い人との出会いもあって、そこで少しだけで人としての成長が見えれば、物語に光明が見えるかなと思うのですが、如何でしょうか?
でも、ラスト辺りでの二人の幻の戯曲のやりとりは個人的には好きですね。
今までの鬱屈した雰囲気から光が見える様な感じで、小劇団っぽい演出ですが、良いんではないかと。
タイトルのソワレと言う名付け方は結構好きです。
タカラが父親に襲われたり、翔太がオレオレ詐欺の受け子をするのも昼間でありますが二人は身を隠す様に夜の街をさ迷い歩く。
ラストの戯曲のやり取りも含めて、ソワレな世界ですが、細かい事を言うと…そんなにソワレだは無いので、マチネ(昼)とソワレ(夜)的なバランスなので、どちらかと言うと「マチソワ」なんですが…マチソワでは題名ではあんまり締まんないですねw
なので、ソワレで正解かな。
閉塞感漂う重い作品ですが、その分役者の技量が問われる作品で、こう言う作品は個人的には嫌いじゃなんですが、タカラの設定はかなり重い。
タカラには同情と共感は出来ても、翔太には個人的には同情も共感も薄い。
タカラがムショ帰りの父親に乱暴されている所に駆けつけ、止めに入って、タカラと一緒に逃げる所ぐらいまでは“翔太、良い奴だなあ〜”と思えても、その後が頂けない。
アルバイトを頼み込んで引き受けた先の梅農家に泊めてもらったにも関わらず、夜中に金を盗もうとする。また金を稼ぐとしてもタカラはスナックで働いて稼いでも、翔太はギャンブルで金を稼ごうとする。あまつさえ、一緒に逃げても“お前のせいでこうなった”とタカラにぶちまけたら“翔太、カッコ悪いぞ”となりますわな。
最後にオレオレ詐欺の加担の罪で捕まらないのも、個人的にはなんか納得出来ないw
ただ、都会に翻弄されて、流される様に生きる若者が純粋で不幸な女の子に出会って、純粋な気持ちを思い出すと言うのなら、そこまでのバックボーンの説明や、東京から遠く関西の和歌山に老人ホームに施設慰問に来た説明があっても良かったのではないかな。
タカラの衝撃的なシーンまでが結構説明不足過ぎて、なかなか分かり難い。
不器用で純粋なタカラとの比較として、翔太をクズな感じで仕立て上げていると言うのは分かるんですが、翔太の生い立ちやバックボーンの説明や描写が薄くて、初っ端からオレオレ詐欺の「受け子」を担っているだけに、夢を語っていても、安易でその場凌ぎの軽い感じと言うイメージが拭えないんですよね。
翔太の扱いや描写は結構重要な筈なのに、個人的にはなんか軽い感じがします。
それがまた、タカラへのウェイトが大きく重くのしかかって、全体の閉塞感を重くしているんですよね。
タカラは…報われないなあ。父親に乱暴されていて、警察にも何度も相談しているのに、解決の糸口が見えないから殻にこもって引っ込み思案の自暴自棄な感じがしている。
この作品はそんなタカラの境遇と思いが全体の雰囲気を作っているからこそ、重くのし掛かるんですよね。
謳い文句にある「ふたりで逃げた。幸せだった。」と言うには個人的には感じられない。あくまでも結果論でそう感じるかも知れないけど、逃走中のタカラは行く先々で必要とされてお金を稼ぐことの嬉しさはあっても、翔太との間にそれを感じ取れなかった。
タカラ役の芋生悠さんは安藤サクラさんみたいな感じで、若いのにかなりのベテラン感が漂う感じ。翔太役の村上虹郎さんは目元がなんとなく菅田将暉さんみたい。でもどちらもピュアで不器用な感じがこの作品の荒々しさと世界観を構築していて気になる役者さんです。
不器用で重い作品ですが、なんかそれがクセになると言うか、目が離せないんですよね。
割と嫌いじゃない作品なのですが、もう少し光明が見える部分があっても良かったかなと。
気分が凹んでる時にはかなりヘビーな作品なので、精神的にフラットか前向きモードの時に観賞をお勧めしますw
NOBUさん
コメント有難うございます♪
お褒め頂きまして光栄です。
なかなか重い作品ですが、互いに思いやり、それぞれの想いに馳せる作品で観賞後も後に残る感じですね。
なかなか癖があって、癖になる感じで個人的には印象的な感じです。
また、お暇がありましたら、覗きに来て下さい。♪
今晩は。
”マチネ(昼)とソワレ(夜)的なバランス” ”今までの鬱屈した雰囲気から光が見える様な感じで・・”
松王〇さんのレビューが、私が鑑賞後に思っていながらも、上手く表現できなかった部分が、絶妙に表現されていて・・。
では、又。