劇場公開日 2020年1月24日

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「演出の方向性に問題あり」キャッツ アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0演出の方向性に問題あり

2020年1月24日
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鑑賞方法:映画館

難しい

萌える

字幕版を鑑賞。アンドリュー・ロイドウェバーの代表作として知られる 1981 年発表の同名ミュージカル作品を映画化したものである。このミュージカルの映像化は 1998 年にも行われているが、そちらは見たことがない。舞台の方は、2002 年にアメリカで見ている。

トム・フーパー監督が 2012 年に公開した映画「レ・ミゼラブル」以来久々にミュージカルを映画化したと聞いて非常に楽しみにしていた。「レ・ミゼラブル」は大変な感動作で、クロード・ミシェル・シェーンベルクの音楽は名曲揃いで、私は映画館に4回通って毎回大泣きして鑑賞したものであった。魂を揺さぶる名作とは、まさにあのような作品を言うのだと思った。

これに対して、「キャッツ」は作品の持つ力がそもそもかなり弱いと言わざるを得ない。人間社会を猫に模しているものの、それぞれの猫のキャラ立ちのために延々と自己紹介のような歌が続き、ストーリーもかなり単純である。「レ・ミゼラブル」では、「Work Song」に始まり、「夢破れて」「ファンテーヌの死」「星よ」「民衆の歌」「On My Own」など耳に残る曲がこれでもかと出て来たのに対し、「キャッツ」で耳に残るのは、ほぼ「メモリー」の1曲のみである。

テイラー・スウィフトは、「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ役のオーディションを受けたらしいが、本作では最初からご指名だったらしい。ジェニファー・ハドソンやイアン・マッケラン、ジュディ・デンチなど有名俳優を配したキャスティングは「レ・ミゼラブル」を彷彿とさせるものがあった。

問題は猫の演出である。ボディラインが明確にわかる猫スーツを着て、顔や尻尾に CG 処理を施したキャラクター・デザインは、終始違和感しかもたらさなかった。端的に言って不気味なのである。その見た目が邪魔をして、曲の魅力などに入り込もうとすることが難しくなってしまった。ミュージカル映画として、これは致命的ではないかと思った。

主人公の猫・ヴィクトリアを演じた女優は見たことのない人だったが、バレエが専門の人らしい。見事なタップダンスを披露する猫もいて、それなりに楽しめたのではあるが、違和感の方が勝っていた気がする。そんな中にあって、最も見応えがあったのは、テイラー・スウィフトの登場するシーンであった。歌唱も見事なもので、彼女を主役にすべきだったのではないかとも思った。一方、最も代表的な「メモリー」は、折角ジェニファー・ハドソンを起用しながら、ほとんど半ベソかきながら歌わせてしまったために、曲の魅力も歌唱の魅力も半減していたのには頭を抱えたくなった。ハドソンが歌唱力を全開にしたのは、僅かワンフレーズだけというのはあまりに勿体無い使い方であった。

やはり基本的なプロットから方向性を誤っていたのではないかという思いが拭えない。どこをどう勘違いするとこうなってしまうのかと、大変残念な思いがした。リピートするほどの作品ではなかった。
(映像4+脚本3+役者3+音楽4+演出2)×4= 64 点。

アラカン