「お・も・て・な・し」ダウントン・アビー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
お・も・て・な・し
イギリス北東部ののどかなダウントン村。そこにある大邸宅で暮らす当主貴族と仕える使用人たち。
世界中で大人気となった英国TVドラマシリーズの劇場版。
漠然と概要だけは知っているが、言うまでもなくTVドラマでは未訪問。
本作で初訪問。
まず魅了されたのは、美しい田舎町の風景、華のある美術や衣装、流麗な音楽、クライマックスは優雅な舞踏会…。
生きた事も体験した事も無い英国貴族世界に、心地よいくらいスッと引き込まれる。
作風はドロドロ愛憎渦巻くサスペンスチックではなく、彼らの日々の営みや複雑な人間模様。喜怒哀楽、格調高く品があって。
TVドラマを見てないので、さすがに登場人物や織り成す人間関係は分からない部分も。
一応把握出来たのは、現当主夫婦、現執事と引退した前執事、メイドたち。それから、現当主の母上、さすがの存在感のマクゴナガル先生!
この劇場版のメインストーリー自体はそう分からん話ではない。
国王陛下夫妻がお泊まりになる事になり、ダウントン・アビーにとって大変何たる名誉!
と同時に、準備に追われる事に…。
当主たちはどう接待するか。
でも一番大変なのは、使用人たち。
と言うのも、国王夫妻訪問の前に王室使用人たちがやって来て、一悶着。
私は執事ではなく上級奉仕官だ、私は王室付きシェフだ、とプライドの高い連中。
給仕係も王室御用達が務め、屋敷の使用人たちは隅に追いやられどころか、格下邪魔者扱い。
自分たちが仕える屋敷で、一世一代の名誉とも言える自分たちの仕事が無い…。
劇場版だけあってエピソードも織り込まれている。
国王夫妻訪問だけではなく、暗殺計画、当時罪に問われた同性愛差別、遺産相続、恋愛模様も。
だけど貴族側は、相関図をよく把握しておかないとよく分からず。
個人的に愉快だったのは、使用人たちの反撃!
偉そうな上級奉仕官様や王室付きシェフ様を部屋に閉じ込め、自分たちがもてなす。
自分たちが仕える屋敷で、自分たちの仕事を!
国王夫妻や当主たちの前でミスしたり、バレたら大問題だけど、結果オーライ。
田舎屋敷の使用人かもしれないけど、彼らだって誇り高いプロ!
ミーハー者が言うのも何だが、何故人気なのか分かった気もする。
実際見て、嫌いになる要素は無い。
ダウントン・アビーがある限り。
当主たちも使用人たちもおもてなし。