ガリーボーイのレビュー・感想・評価
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I never sleep, ’cause sleep is the cousin of death. いつもゲットーでヒップホップの猿真似、いずれゲトるヒップホップでビッグマネー♪♪
ムンバイのスラムで暮らす青年ムラドが人気ラッパーへと成長していく様を描いた、実話を基にしたミュージカル・ドラマ。
アジアで最も億万長者の多い都市、ムンバイ。1,000万人以上が暮らす世界有数の大都市である。
IT産業の発展などにより急成長を遂げている、インドを代表する華やかな都。しかし、光が強ければ強いほど、その影も大きくなるのが世の常というもの。
ムンバイ中央部には”ダラヴィ”と呼ばれるスラムが形成されている。そこには2.4㎢に70万〜100万人が住んでいると言われており、世界で最も人口密度が高い地域の一つに数えられている。これだけの人間が住んでいながら下水と排水のシステムが貧弱であるため衛生環境は劣悪。疫病の温床となってしまっており、近年ではコロナウィルスのパンデミックでも大きな被害に見舞われた。
このインド最大のスラムが本作の舞台。ムンバイを代表する2人のラッパー、ディヴァインとネイジーの人生から着想を得た物語となっている。この2人のスタイルは「ガリーラップ」というジャンルに分類されるようで、これは貧困や差別など、実生活での不満や怒りをビートに乗せて吐き出すというもの。上部だけの薄っぺらい言葉ではなく、その人間のナマの部分をガツンとぶつける、80〜90年代のヒップホップ黎明期を思わせる音楽がムンバイから出てくるというのは、そこに暮らす若者たちがいかに抑圧されているのかを端的に表しているような気がする。
陽気で楽しいマサラ・ムービー、というイメージがあるボリウッド作品だが、本作で描かれているのはそれとはまるで逆。貧困や格差といった社会問題に苦しむスラムの実情と、過剰なまでの家父長制や保守的な社会構造、男尊女卑に不満を抱える若者たちの絶望を怒りと共に描き出す。
富裕層にははっきりと見下され、外国人には動物のように扱われるムラド。さらに父親は勝手に重婚をし、若い妻を家に住まわせるようになる。
この地獄の釜の底の底のような環境でも、忘れずに胸に抱えていたヒップホップへの愛情。MCシェールという兄貴分との出会いにより一気に才能を開花させた彼が、そのたったひとつの武器を手に人生を切り拓いていく様に、目頭が熱くなるのを抑えることができなかった。
陽気なパブリックイメージとは一線を画す本作だが、歌とダンスというインド映画のお約束は踏襲されている。個人的にあまりミュージカルは得意ではないのだが、本作はそもそもがヒップホップを題材とした作品なのでそういったシーンもあまり気にならない。
歌とダンスが始まると突然ミュージックビデオのようになってしまうというインド映画独特のクセを、ミュージックビデオの撮影という体を取ることでカバーするのはなんとも上手い。普段インド映画を見慣れていない観客でも、この映画はすんなりと受け入れる事ができるのではないだろうか。
過剰な説明セリフに頼ることなく相関図やキャラクターの心情を伝える手腕は非常にスマート。特に冒頭、ムラドとサフィナの関係をサイレント映画のように描き出すあの一連の流れはとにかく美しい。青春映画としても一級品である。
ただ、テンポよく進んでいった前半に対し、後半は明らかに息切れしていた。154分というランタイムはインド映画にしては短いとはいえやはり長尺。この内容であれば120分、いや100分もあれば描き切れたはず。
ヒップホップ要素に加え『ロミオとジュリエット』的なラブストーリーまで描くというサービス精神は如何にもインド映画といった感じだが、正直ムラドとサフィナとスカイの三角関係要る?とか思ってしまった。Nasのライブまで、まだ時間かかりそうですかねぇ〜…。
ヒロインを演じたアーリヤー・バットは、歴史的傑作『RRR』(2022)に出演したことで日本でも広く知られていることと思う。エキセントリックな性格のサフィナをイキイキと演じ、この映画に華を添えていた。
ただ、個人的に注目して欲しいのは見事なラップを披露していた主演のランヴィール・シン。後で調べてみて驚いたのだが、彼は『パドマーワト 女神の誕生』(2018)という作品で悪のムスリム王アラー・ウッディーンを演じていたお方。この作品での彼の演技はとにかく凄まじく、色気たっぷりのダンスシーンには目を奪われてしまった。
すごいのは本作の主人公と『パドマーワト』の悪王を演じているのが同一人物だとは全く思えないところ。雰囲気が違いすぎて全然そうだとは信じられず、ただただ困惑してしまった。
カメレオン俳優という呼称は彼にこそ相応しい。今後国際的にもスターになっていくのではないでしょうか?今のうちから注目しておけば、いざそうなった時に古参ぶれるかも。
どん底にいる人間が前時代的な社会の常識をぶち破り、やがては偉大な存在へと成り上がる。皆んな大好きな『ロッキー』(1976)タイプの負け犬返上映画である。シリアスな物語ながらコミカルな場面も沢山あるし、友情・努力・勝利という「ジャンプ」三原則がきっちりと描かれている。誰が観ても面白いと思える作品なのではないでしょうか。
万人におすすめしたい映画なのですが、一つ気になるのはエミネム主演のヒップホップ映画『8 Mile』(2002)が頭をチラついてしまうこと。実は『8 Mile』は未見なのだが、自分の中にあるこの映画のイメージはまさに本作で描かれていた内容そのもの。見比べてみると「いやこれそのまんまじゃん!!」ということになりそう。
『8 Mile』を鑑賞しているかしていないかで、本作の評価が変わるかも…。
等身大のムラドが家族や恋人と自分の夢の狭間で葛藤して『夢』を勝ち取る物語
自分にとって100%の満足度はない。テーマ性も物語も悪くないが今一歩という感じ。正邪の中間であえぐ等身大のムラドに共感はするが、その才能の開花は作品の持つテーマに対して少し矮小的で、その分彼の歌う力強さに少し肩透かし感を感じたからだと思う。
この作品を見ることで、素晴らしいテーマ性や社会問題の提示を行う楽曲や創作物について、今までと違う考えを得た。すなわち、一言で言えば、素晴らしい作品は作者に対して凄まじい逆境や素晴らしい人格と言ったものを必要としないということ。
一個人や団体の力によって発表され、その意図が視聴者や読者、ファンによって読み取られるという構図がある。その中でテーマが生きるのは作品が受け入れられる瞬間であって、決してそれはすべて製作者に還元されるものではない、すなわち、製作者は社会的悲劇の重荷を背負わずとも個人の経験を感情的に、テーマにそって描くことができればそれが普遍なテーマとして受け入れられるのだということを考えた。
どうしてこういうことを考えたかというと、ムラド=ガリーボーイはインドの身分差別の強いスラムで生き、その影響を受け生きているのは事実だが、彼が憤るのはいつも個人レベルであって、彼の怒りは手短かにあり、それは抽象的で大きな社会問題にはない。個人的な怒りをリリックとフローに乗せるとそれが大きな普遍的なものに様変わりするのは、声優がキャラクタに息を吹き込む行為ににているとも思った。そもそも歌や絵や映画やアニメは抽象的なテーマを持つが全て受容者に対してフィクションであるのだから当然ではあるが。
楽しかった
インド家庭内DVって社会問題にならないの?
いくつかの映画で観たから、事実なんだろうな。
それにしても、あの彼女激し過ぎ。暴力も酷いわ。
それでも仲直りするところは個人的に共感出来なかったけど。
インド映画の音楽はなんだか耳に心地良くて好き。
ラップも良かった。
それにしても、インドもスマホの普及率はすごいのであった…。
インド版「8マイル」だけにとどまらない!
インド版「8マイル」ともいえる、ラッパーを目指す青年の青春物語。
エミネムの映画と違うのはインド社会の現実(貧困、階級差別、性差別)の過酷さだろう。
ラッパーになりたいとめざめるところから始まるので若干まどろっこしいが、全く飽きることなく話が進む。恋愛することの大変さ、親からの締め付け、そして親世代が持つ固定観念。こうした困難に立ち向かい乗り越える姿はやはり感動的だった。
気になる点もないわけではない。ラップバトルがリズムに乗ってないことや、重婚と浮気の問題だ。結局あの娘と寝てたんかい!そして許すんかい!
でも、そんなことを気にするのが野暮だと思えるほどによかった。
心の優しさが生んだスター
非常に恥ずかしいが正直ラップの知識もなければnaezy さんのことも知らない。評価が高かったので鑑賞した。
しかしそんな僕でも非常に楽しく鑑賞する事ができた。
ラップミュージックを聴いてるだけでは僕はあまり興味が沸かない人間だが、この作品のように歌い手の心情や背景が見えると非常に楽しく、そしてハートで音楽を聴けてるような気がする。そうなると普段は特別興味を示さないラップミュージックも、この劇中では終始非常にラップミュージックを楽しみことができた。
そうやってラップミュージックの理解や興味を示すきっかけにもなりうる作品だ。
ストーリーはnaezyさんの実話に基づいての作品。よくある貧困層からのサクセスストーリーなため、その手の作品が好きだったり観慣れてると、そのジャンルの中でもとても観やすい作品に思えた。ただこの作品の主人公のムラドの成功は優しいハートを持ってるが故の成功なんだよね。まぁ車盗んだり、浮気したり完璧な人間じゃないところもまた人間味があって見易かった。
そしてこの作品でなによりも面白いのが、ムラドの彼女のサフィナの存在。
彼女の愛の表現が非常に面白い。情熱的なのは素晴らしいことだが、行きすぎて暴力的な行動発言を繰り返す姿は終始笑わせてもらった。
若干作品の長さを感じてしまったところもあったが全体としては楽しく見ることができた。iTunesmusicでラップミュージックを聴いてみようと思う。
とても良い映画
インド映画…150分以上もある…ラップ苦手かも…
色んな不安要素が、頭の中をグルグル…
…杞憂でした(笑)
この作品…
インド映画にしては、
"陽気に"歌って踊らない…(思ってたよりかは)
それに、まあまあ社会派寄りで、なんか暗い(笑)
結果…
恋愛もの、青春ものとして、普通に良質の作品でした。
この秋のオススメですね!(笑)
*ラスト近く、主人公と父が本音をぶつけ合います。二人の心はちょっとすれ違ってしまいますが、"使用人の子は、一生使用人"と思って生きてきた父の心に涙しました。そして、それに抗い、自分の夢を語る息子にもジーンと来ました。
*主人公ムラドと恋人サフィナに幸あれ!
*しかし、インド女性は気が強い!(笑)
180度違います。amazon.comではprimeビデオです。
わずか半年以上前とはいえ、映画の内容や出演されていた役者さんを全てスッカラカンに忘れていた映画「パドマーワト 女神の誕生(2018)」。CGで描いていた豪華絢爛な宮殿や女王様の鼻ピアスの大きさだけが記憶に残っていた映画で、とても失礼なことをしたと思う。それなら書くなってか? その映画で敵役であり、人の奥さんにちょっかいを掛ける悪役を演じていたのがランビール・シン。その彼が、「パドマーワト」での悪役とは180度違う、母親思いで、恋人のサフィナにやさしい好青年?のガリーボーイことムラドを演じている。
Your father is a driver, remember?
A servant's son is a servant.
It's the law of nature.
But your mother is fighting for you not to be a servant.
Keep that in mind.
The rest is up to god.
とにかく2時間半越えという長さ。インド映画ですから何か? メインはラップ。しかし、そこにドラマ性も含め、トタン屋根の下、灼熱地獄になりそうな家で暮らす主人公のムラドがラップに目覚めてから競技会に出場するまでの道のりを父親との対立や恋人のサフィナとの、つかず離れず状態のいい感じの関係やラップ仲間や幼馴染の半悪との関係など今でも色濃く残る身分制度「ヴァルナとジャーティ」のムンバイを含め南インドには、その存在が残っている背景を考えながら見ると....考えながら見るその必要はありません。どっちなの?単純ですから。
I've seen more sunsets than you have.
I've taught you only what I've learned.
Your dream must match your reality.
-I will not change my dream to match my reality.
-I will not change my reality to match my dream.
-God has given me a gift.
-I won't give it back.
-I've made my decision.
-That's it.
インドの口コミ現象を記録および文書化するインターネットミームデータベースWebサイト”Wotpostは”の記事の中に”Is ‘Gully boy’ a rip-off of 8 Mile?”というものやインドのニュースメディア出版会社のウェブサイト The Indian Express にも”Although Ranveer Singh's performance got a thundering response online, many eagle-eyed Twitter users couldn't stop commenting on how the teaser gave them a vibe of Eminem's '8 Miles'. ”というように2002年のアメリカの映画「8 Mile」と似ているところを指摘するサイトやツイッターの意見、それと少しニュアンスの違う、似ている部分もあるけれども全体ではあまり感じられないという意見も聞かれる。
Don't hit her!
Don't touch her!
-No wonder your husband brought home a new wife.
Let's go, Ma. We can't stay here. You come too.
-What about me?
Your son will look after you.
You've raised him so well.
Hollywood Reporter:映画、テレビなどのエンターテインメント業界の情報を扱う週刊誌の電子版。Stretched out, but the moves are convincing. 2019.9.2.の記事より
「ゾーヤ・アフタール監督は、才能と情熱を持って作品を成し遂げ、また適切なキャストから、その爆発的とも思えるパフォーマンスに助けられて、映画「スター誕生(1954)」と同じ物語から、親しみやすさを勝ち取っています。」
スラムだから許されるのか? 女性同士の争いや夫婦間の暴力、そしてなりよりも子供たちWEEDのような葉っぱを手のひらサイズのプラスチックバッグに詰めさせる場面も出てきたりもする。”G”という視聴制限は何かの間違いかと思ったが、考えすぎか?
ムラドとサフィナの身分の違いを明確に表している冒頭のシーンが反って2人の仲睦まじい心地よい表現となっている。
しかし、ヒンディ語のラップは何を言っているのか、皆目見当がつきませんでした。2時間半が泡と散っていく........?
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