劇場公開日 2019年10月18日

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「ヒンディー語もラップがよく似合う。」ガリーボーイ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ヒンディー語もラップがよく似合う。

2019年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 もちろん思い起こすのがエミネム主演の『8 Mile』なのですが、同じようにインド・ムンバイのスラム街で育ったムラドのストーリー。ヒンディー語もリズミカルでラップには合うことがわかったのですが、こうなってくるとリズムやアクセントのない日本語ラップが置いてけぼりを食っていることも同時にわかる。しかもメッセージ色もない日本のラップ。ファンには申し訳ないがお経と変わらないと思うのです。秋田音頭の方がよっぽどラップ調だ・・・ホイサッサー。

 『ホテル・ムンバイ』を観てからまだ日が経ってないのに、この映像は何だ・・・明らかにゴミの川としか思えない橋の上で逢引する二人がとても印象的。バスの席を強制的に譲らせるという国民性も驚きだったし、ダーラヴィー地区の現状を見せつけられた気分になりました。主人公ムラドが住むのもバラック小屋の密集地でイスラム教徒(人口の18%)が住んでいる。父親がいきなり若い女性を「新しい母さん」などと言って連れてくるのもイスラムならではの重婚だ。生活が苦しいのに元気なことだ・・・よーわからん。そして、びっくりしたのがロンドンからのスラム街ツアー。貧乏生活を取材させて小金を貯めるなんて・・・卑屈になりそう。

 大筋はラップに目覚めたムラドがガリーボーイと名乗り、ネット上で人気を博し、徐々に頂上を目指すストーリーと、身分は違うが医学生のサフィナと親非公認でつきあってるラブストーリーの二本立て。そこに貧富の差を感じさせる社会派メッセージを取り入れている作品。

 そんな貧困家庭であっても大学だけは行かせてくれている両親。家父長制を思い出すくらいに親が絶対権力を持っていて逆らえない家庭環境。そして就職するにしても「使用人の子は使用人」だとする封建社会を見せつけられる。いきなり一流企業には就職できないという江戸時代のような世の中なのだ。

 ラッパーとしてのアーティスト活動も趣味の範囲内でやっていたけど、夜には伯父の家に奉公に・・・寝る暇ないぞ!いや、デートだってできない。やがて、アメリカの音楽院からやってきたスカイの誘いに乗って・・・いや、男ならしょうがないって。という恋愛の危機も見せてくれた。

 面白いところ、泣き所もあるのに、154分は長すぎたか。もうちょっとテンポよく描いてくれたら満点でもいいのに。

kossy
NOBUさんのコメント
2019年10月21日

今晩は。

 私の勝手な解釈ですが、ムラドの父親は努力したが、ムンバイのダラヴィ地区から抜け出す事が出来なかった。だから雇われ運転手をしている。そして自分の不甲斐なさに鬱屈し、大学に苦労して進学させた息子に希望を託していた。
 一方、伯父さんは努力して、地区の有力者(けれど、住居の内装から察すると大金持ちになった訳ではない)のようなポジションに自力で這い上がったのでは、と推測しました。

 私は仰るように職業の貴賤の差だと思い、余り違和感なく鑑賞しました。

NOBU