「名作のリメイクとして相応しい力作であると言い切れる」ウエスト・サイド・ストーリー じきょうさんの映画レビュー(感想・評価)
名作のリメイクとして相応しい力作であると言い切れる
往年の名作「ウエストサイド・ストーリー」を、なぜ今、スピルバーグがリメイクするのか。
当時不可能だったことを現代の技術で再現するのか?あるいはデカプリオの「ロメをとジュリエット」のような現代版にリメイクするのか興味があった。
結論としては、当時の雰囲気を残しつつ現代の役者によるリビルドであった。
主役といえる音楽もあえてレナードバーンスタインのスコアを尊重しつつ、音楽監督と指揮者によるスコアの精査が効いている感じがして、非常にスピード感とクリアさが際立っていた。
また、ダンスはジャスティンベックの切れ味のいい振り付けが現代的で見応えがある。特にクールを担当するジェッツのダンスは最高だった。
ストーリーはあえて繰り返すまでもないが、「ロメオとジュリエット」である。
それを知っていれば、トニーとマリアは出会った日に恋に落ち、バルコニーのシーンがあり、翌日に教会で結婚し、その夜に決闘があり、悲劇が起きる。とまあたった二日間の話である。
様式としてミュージカルであり、歌とダンスとストーリーが融合されているので、単なる映画としてみるとなんでここで歌うの?ということになるが、舞台芸術を映像に翻案しているわけだからそれは受け止める必要がある。
なんでこんなことを言うかというと、トニーとマリアの出会いからキスするまでの時間の短さ、翌日には結婚を決意する性急さ、決闘によってそれぞれのリーダーが死に、逃げるトニーが向かった先がマリアの元で・・・寝る。はあん。
エンディングで死んだトニーをジェッツとシャークスのメンバーが棺を担ぐかのように抱え、マリアが葬列のように続く。まさに様式美。映画は2時間半と長丁場だが、本当に短くあっという間の時間だった。映画を見たという満足感が高い映画だった。
それでも、ちょっと減点したのは、全くのリメイクであったこと。
もちろん新しいアイデアはたくさんあった。象徴的なのはトニが死んだ時に、バレンティーナ(前作でアニータを演じたリタ・モレノ)が「Somewhere」を歌う。本来はトニーを抱えながらマリアが歌うパートであったはずだが、筋を精査した結果マリアが歌うのはおかしいということになったそうだ。バレンティーナはうまくはないがいい味を出していて納得はした。
それにしても、もっと現代的なウエストサイド・ストーリーを期待した人は多かったのではないかと思う。
しかし、音楽もフルオーケストラを全編に使うことで、古臭いイメージは払拭できなかった。曲調によっては新鮮なスコアにしても良かったのではないか?ジョン・ウイリアムズに手を入れさせるてもあったはず。
余計なことだが、あの短い間のMake Loveは必ずやBabyにつながったはずだ。その子供を見せてくれてもよかったのではないか?
役者はみんな上手かった。特にジェッツのリーダー「リフ」(マイク・ファイスト)は特にいいと思った。顔にちょっと傷があってそこもよかった。自分が女だったら惚れそうだった。
もう1つ蛇足
ヒロインのマリアは兄にあてがわれた好きでもないチノとダンパに行くが、そのチノにトニーを殺されてしまう。
でも実生活ではレイチェル・ゼグラーとジョシュ・アンドレスは恋人になったんだとさ😀