「リタ・モレノをみる」ウエスト・サイド・ストーリー yostakkazさんの映画レビュー(感想・評価)
リタ・モレノをみる
ウエスト・サイド物語は、初めて四季の演劇でみて、その後に61年版のリバイバルをスクリーンで観た口です。61年版は、演出・楽曲・振付・俳優陣すべてが「神」がかっています。私が20代で観てそう感じたのですから、今の20代の方が観ても同じ感じ方になるでしょう、というのは思い込みが過ぎるでしょうか。
さて、スピルバーグ版です。序曲までは付きませんでしたが、オープニングから61年版を敬愛しているのが伝わります。楽曲は、多少のアレンジがありますが、全く違和感なくバーンスタインほぼそのままで、嬉しくなります。振り付けは、洗練さからどうしても61年版のJ・ロビンスに軍配を上げざるを得ませんが、スピルバーグの”アメリカ”は、明るく開放的な分、ナンバーの中で一番冴えています。アニタ役の女優が好印象なのが理由なのかも知れません。
残念なのは、マリア役、ベルナルド役の俳優にもう少しスクリーン上の魅力が欲しかったところで、私は特にこの2人にあまり感情移入ができませんでした。あのN・ウッド、G・チャキリスと比べるのはあまりに酷でしょうか。また、”トゥナイト”はやたら四角格子が重なった画になって勿体ないし、映画的な見せ場の”クインテット”は少しあっさりしすぎ、”クール”はクールでなく砂埃のイメージになってしまったりと、今一つ跳ねない部分がいくつかあります。
ですが、たまり場の店主リタ・モレノが”サムウェア”を一人想い深く静かに唄う場面に胸を打たれます。61年版アニタ役がこの新作で唄うのです。ここだけで、もう満足しました。役柄も良く、とても90才には見えません。調べると、G・チャキリス、R・ベイマー、R・タンブリンもご存命のようで嬉しい限りです。神がかりの映画に挑戦したスピルバーグ監督の意思には、拍手を送りたいと思います。
(PS. ”westsidestory”のタイトルがどこで出たのか気づかず、また、チノ役の男優が終盤になって61年版のR・タンブリンの姿に見えてきた、のが不思議でした。)