劇場公開日 2022年2月11日

「今なお伝えるべきものが、このリメイク映画にある。」ウエスト・サイド・ストーリー M.Joeさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0今なお伝えるべきものが、このリメイク映画にある。

2022年2月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2時間37分と長い映画でしたが、あまり長さを感じさせませんでした。オリジナルの映画を見ていたので、前半の導入部はだいたい同じようでしたが、決闘への流れの辺りから、ストーリーの骨子は踏まえながらも、演出が全然違う展開が出てきました。

NYの有色人種プエルトリカンがスペイン語で話すのを、何度も白人が英語で話せというシーンが出てきます。スペイン語が少し分かるのとラティーノの英語に馴染んでいるので、この言葉のやり取りはとても面白く見ました。この言葉の違いは重要です。
踊りの振付や曲目は古い映画とほぼ同じ内容だったので、リメイクする意味は何?と見ていました。後半からは特に現代に合わせた場面設定や踊りなど全く違うところもあり、複雑化する人種問題を見据えて、今なお解決できていない社会問題として人々に訴えているのではと思いました。エンドロールで「父へ」とあったのは、悲しいけどまだ現実はこうなのだということを。

アメリカのサイトを読んでみると、ブロードウェーの舞台も踏まえ、賛否両論ありますが、おおむねは評価しているのが多いです。
マリアはプエルトリカンなのでスペイン語がネイティブ。英語はスペイン語訛りになります。そのマリア役はレイチェル・ゼグラーが約3万人の中から射止めたとのこと。アメリカ人ですが母親はコロンビア出身。家庭の中でスペイン語も話せたのでしょうね。彼女のスペイン語とスペイン語訛りの英語はとても良かった。
バレンティーナ役のリタ・モレノは、オリジナル映画にもマリアのお兄さんの恋人役アニータで出演しており、製作総指揮の一人としてクレジットされています。彼女は本当のプエルトリカンです。
更に調べてみると、マリアのお兄さんベルナルド役はデビッド・アルバレスでカナダ人ですが両親はキューバ出身。道理で本物のラティーノでした。

プエルトリカンがダンスホールで踊るとき「マンボ」と言ってみんなで踊ります。人種のぶつかり合いと、プエルトリコの絆を大事にするその「血」が、ダイナミックな踊りとなり、ニューヨークにおけるアイデンティティの象徴である「サルサ」へとつながっていくのだと、一人勝手に信じています。

主人公のトニーとマリア、ベルナルドなど、オリジナル映画の俳優たちの方が個人的には好きで、全体的にも当時の現場をリアルに伝えているようでしっくりきました。

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M.Joe