「どうか彼らが...。」ウエスト・サイド・ストーリー スカポンタン・バイクさんの映画レビュー(感想・評価)
どうか彼らが...。
本来、去年映画館で観る最後の一本として考えていた本作「ウエストサイドストーリー」。残念ながら延期になってしまい、去年最後に観たのは「ヴェノム/レット・ゼア・ビー・カーネイジ」になった。まぁ、それなりに良かったかな。
そんな事があっての、満を辞しての本日の公開。1961年版を観るタイミングが取れず、予習なしの視聴になったのは少し心残り。
本作。私としては非常に満足度が高い一本でした。本作は映画だからこその演出と同時に舞台的な画面作りがされているという不思議なバランスをした映画だなぁと感じました。ここに関しては、映画として見過ぎると違和感を感じる人もいそうだなぁと思いました。ただ、私はここがハマりました。舞台は映像作品と違い、細かな表情演技や編集による演出技法が発揮できない分、ある種の誇張された演出と舞台設計が成されるものです。それ故に、それをまんま映画に持ってくると、臭かったり下手に見えたりしてしまいます。そんな中で、本作はそのバランスが凄く良くできてるというのが素晴らしいと思いました。ここは、1961年版はどうなのかなぁと気になる所ですね。
そして、画面が終始素晴らしい。私はレンタルや午前10時の映画祭などで過去の映画を観るのをそれなりに好んでいる人間なので、本作のリメイクとしてのリスペクトから作り込まれた美しさと豪華さには終始気分が高揚していました。
しかしです。映画として素晴らしいというのは観客としてはありがたいことな訳ですが、それが「ウエストサイドストーリー」というのはいかがなものか、と思わずにはいられません。本作は、ウエストサイド・マンハッタンを舞台にしたロメオとジュリエットというのは、もはやネタバレというか古典なので言及を許してほしいわけですが、1957年に公演が始まって以降も本作が人種問題の重要な作品として現在も現実的だというのだ。この作品がただのフィクションとして楽しまれる日が来ないまま60年以上が経過してるわけなんですよね。これほどの悲劇があるのでしょうか。
「Somewhere」という曲が非常に印象的でした。私はこの曲を聴いている時にジュディガーランド主演「オズの魔法使」の一曲「Over the rainbow」を思い出していました。同時に「ジュディ/虹の彼方に」を。
舞台に立つ彼女にどうか幸せになってほしい。「ジュディ/虹の彼方に」を観ている間、私はそう思わずにはいられない。
ウエストサイドストーリーも同様です。階段で愛し合う彼らにどうか幸せになってほしい。この悲劇がこのリメイクで終わる事を、心から願うばかりです。
そんな永らく続く人種問題なんかをスピルバーグには意識しないでもらいたいんだ。私は、彼が生きてるうちにゴジラ作ってもらいたいんだ。だからさ、みんな仲良くしろ!争うにしても、スピルバーグがゴジラ作ってからにしろ!(作るかは知らないけど。作ってくれたら絶対行くぜ!)
というわけで、(どういうわけなのか...)映画館で一見の価値が十分ある作品です。
この作品がただのフィクションとして楽しまれる日が来ないまま60年以上が経過…正にそれがスピルバーグが本作で世に問いたかったことなんでしょうね。
全く同感です。