KESARI ケサリ 21人の勇者たちのレビュー・感想・評価
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シンさんだらけの砦防衛線
実話ベースの近代劇
統治時代の大英帝国、一部の役人や軍人の、インド人へ対する扱いが丁寧に描かれています。
こういうのが植民地統治する側とされる側なのだというのだろうなと。
主人公補正の掛かったアクシャイ・クマールの超人的な敵撃破数ですが、砦を囲む圧倒的な敵に最後は敢無く玉砕。男たちの大和的な死に逝く者達の美しさが感じられる作品。
カタルシスの得られないバイオレンスアクション
うーん、私にはちょっと合わなかった。
パドマーワトは物語として、思想的な部分とは切り離して楽しめたんだが、今作は現実味が強かったからかなぁ。
基本論理が体育会系過ぎて、気持ちがついていけなかった。
冒頭からして、殺されそうな女性を助けるためとはいえ、国境侵犯&問答無用&配慮無視で殺傷強奪とくれば、そりゃ相手に逆ギレもされるだろうしお咎めも受けるよ…。かといって見殺しにしても後味悪いが。
砦の攻防戦にしても、意思確認はしてるとは言え、待機命令を隠して決死特効って。部下の命を預かる上司としてそりゃアウトだろう。
部下の処罰に付き合って断食ってのも、いかにも体育会的だし。そんな調子で、ちょいちょい「主人公は高潔な人物」的エピソードが挟まれるのも、何だか取って付けたように感じられて、全く共感できなかった。
実際戦場で倒れてるのは、手伝いに行った村の男連中みたいな徴収兵だろうしねぇ。
英国支配下に於ける民族的誇りとか、戦士としての義とか、戦時の人道とか、名誉とか、尊厳とか。言いたい事、表現したい事は解る。解るんだが、納得も、感動も、私にはできなかった。
そういう、一般民衆や兵士レベルでの戦いの虚しさみたいなものも仄めかせながら、最後に、彼らの死を美談ぽく落とし込んで終わってしまうのもモヤモヤする…。まあパドマーワトも同じようなオチなんだが。
戦闘シーンの一騎当千的表現も、史実ベースの近代戦の中では浮いて思えて、イマイチだった。
21人全員に個性とエピソードを盛り込んで、一人一人の人生と死に様をクローズアップさせていく構成はいい。『七人の侍』っぽい。
敵方にも、オネエ風味の凄腕スナイパーや、義に厚い首長など、魅力を感じられるキャラクターを配してバリエーションをつけてるのもいい。
こういう点を見ても、なるほど、これはインド版時代劇であり、西部劇であり、バイオレンスアクションヒーローものとしての作品なんだなぁと理解はできる。
何故か今回は、そこを割り切って見られなかった。
元々血の気多めなバイオレンス苦手だしなぁ、私。好みに合わなかったという事でしょう。御容赦。
歴史はわからずとも
素晴らしいと思える秀作。こうした戦争、史実ものは、いくら歴史を学んでも難しいので、ましてや不勉強な私には善悪にはとても言及できませんが、映画作品として好きです。素晴らしい秀作。
序盤でイシャル軍曹の人柄や誇りを描き、中盤で36隊の絆や個々人のエピソードで和ませ、終盤にかけては壮絶な最期の折り重なり……
心の声と思える妻のビジョンと、劇場内ここそこから聞こえるすすり泣きが一層切なくさせて…お見事です。
また、敵方も、悪役的に描かれる場面は多々あるものの、キャラクターによっては仁義があったり、完全に安っぽかったり…じつに魅力的!!
「マッドマックス」のギター野郎ポジな謎のスナイパーなんかは同スタッフの遊び心を(勝手に)感じます。
そして一方、もうなんの説明もいらない、わかりやすいアクションシーン。効果音やスローモーションの多用、謎のドラムバトルも含めて、これぞ王道インド映画?とにかくドラマチック。
とくに軍曹の覚醒シーンは、アベンジャーズに入れたほうがいいんじゃないかと思えるほどの戦いっぷり。燃える剣と輪っかで戦うのがかっこよすぎ。
何に涙しているのか?と自問しつつもアクションで熱くなる、熱い一本でした。
自由な人として生き、自由な人として死ぬ
主人公のイシャル・シンが、シーク教徒のシンボルと言ってもよい自分のターバンを両手で整え身構える時、戦闘態勢をとる合図となる。
イギリス領の北インドの地で、今まさに若きパシュトゥーン人の女性が、同じ仲間から剣で首を切り落とされそうになる。それを見かねたイシャルが、果敢にも上官の命令を無視して、助けたため愛妻を残して一人指揮官として辺境の地にあるサラガリ砦に赴任することとなるが.........
その砦にイシャルが着くと兵士たちは、闘鶏に興じていて、しかも誰一人としてまともに軍服も来ていないだらしなさをさらけ出していた。イシャルが"全員1週間の飯抜きだ!"なんて言っても懲りない連中に対して、"2週間だ!"と言いつけるイシャル。そんなことをすれば兵士の中には不満を持ちイシャルを疎ましく思うはずなのだが、その2週間のおかげで兵士たちはイシャルの人間性にも触れ、兵士としての自覚も持ち始め、また兵士としての統率もとれるようになっていく。その過程を描いているシナリオがコメディの要素もふんだんに織り交ぜながら、しかも、いつものチームワークのとれたインドダンスと音楽も披露している。前半の部分は、とにかく兵士の性格や状況、つまり兵士の中には、イシャルのように故郷に肉親を置いてきて、唯一の楽しみが子供からの手紙を肌身離さず持ち、いつでも読んでいたり、人が笑わそうとしても決して笑わない者やその逆の者、そんな彼らの様子を描き、最初、イシャルも現場にはいないはずの愛妻と話す微笑ましい会話のシーンも登場する。それは彼の心の幻想を描いていたのか?
戦争のため若い者が駆り出され、家の修理もままならない村人に手を差し伸べるイシャル。何よりも戦闘で倒れている敵の兵士に対してまでも水を与える指示を出す彼だったが......!
映画も半分が過ぎたころ、サラガり砦に隣の味方の砦から危険を知らせる合図が届くとイシャルが周りを望遠鏡で見ても誰もいない? 引きあげて帰ったのか? 突然、角笛が鳴り、太鼓の音が鳴り響き、次の瞬間パシュトゥーン人や周辺の部族の混成部隊が砦に迫ってきていた。イシャルは直ちに兵士20名を中庭に召集する。そして彼は、この砦を捨て退却をすることを提案する緊張の場面で、誰一人として声を上げないでいると、いつも決して笑わない兵士ボーラが大笑いをしながらこんなことを言ってのける。
They're asking us to run!
We should flee!
また別の兵士チャンダ・シンが、このように言ってのける。
A man who keeps preaching love and humanity.......
How can he fight a war?
Why are you trying to weaken our resolve, Sir?
Why don't you just admit....... That you're scared seeing so many Pathans.
You don't want to fight this battle, Sir!
指揮官、イシャル・シンが動き出す。
映画全体を通じて個人的に言えることは、前半部分のコメディ色のあるシナリオと後半のいつ終わるかもしれない壮絶な戦闘シーンと大きく2つに分かれる演出がされ、しかも砦の10mはありそうな高さから飛び落ちるシーンを1カットで上から撮影したり、体にいくつもの剣が刺さって息絶えるところのギミックを使ったゴア表現も安直なつくりはされていない。役者さんやスタントマンの頑張りが映像から伝わってくる迫力あるシーンの連続となっている。ただラストはやりすぎ感があるようだが、それをも御愛嬌ということで.......!
批評家からあまり指示を受けていない本作。amazon.comではプライム会員にはすでにプライムビデオとして配信され、80パーセントの視聴者が☆5をつけている。また別のサイトのレビューもamazon.comの支持よりも上回っている。
余談として、シーク教徒と聞けば、すぐにコロンビア大学の"選択"というものを科学的にわかりやすく教えてくれていて、日本にも確か来日したことのあるシーナ・アイエンガー教授のことを思い出す。「選択肢は多ければ多いほどよい、そう考えているあなたは間違っています」で始まる「選択の科学」で知られている彼女の両親もまた敬けんなるシーク教徒と聞く。彼女曰く、結婚の相手は両親が決めるそうだ。
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