劇場公開日 2019年12月27日

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「泣けて笑えて考えさせられる」だれもが愛しいチャンピオン andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0泣けて笑えて考えさせられる

2020年1月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

基本的にな類型としてはよくあるパターンの物語だと思うのだが、とても良作。やはり感動した。
気性が荒くて、押せ押せで、せっかちで、気遣いがちょっと足りないバスケットボールのコーチ、マルコ。性格が災いし、「ヘッドコーチと乱闘、その苛々で飲酒運転、その挙句にパトカーに追突して有罪、90日の社会奉仕活動命ず、おまけにチームを解雇」というのが一遍にやってくる。ああ自業自得。
マルコは「根はいいやつなんだけど基本的に人を思いやらない」タイプの男。彼が知的障がい者のバスケットボールチームにやってきたら...まあ起こるのは圧倒的ディスコミュニケーションである。
コメディタッチで描いてはいるが、最初はコーチとチーム、全くコミュニケーションが取れない。というかマルコは自分のスタイルを崩さないし、チームメンバーはもちろん徹底してマイペース(に見える)。
そしてマルコは妻ソニアとの間にも問題を抱えていて、それがチームメンバーとの「交流」と密接に関わるというつくり。
チームメンバーには本当に驚かされる。どんな人にも「なにか」があり、バスケットボールを練習し、プレイする過程で彼らはそれを遺憾なく発揮する。そしてコーチであるマルコは彼等に「育てられる」のだ。教える側と教えられる側の逆転。
マルコも、口は悪いが根の人の良さがものすごいので、どんどん吸収して愛される。「コーチみたいな父親がよかった」は泣いた。忖度などない人間にそれを言われることの感動は計り知れない。
一緒に闘って、恐怖を克服して、家族と分かり合って。マルコと母親の親子関係が微笑ましい。あのふたりそっくりすぎて...。
ラストの決勝戦は手に汗握って見ていたけれど、あのひとひねり効いた結果が素敵だった。喜びに満ちているし、皆言うことがウィットに富んでいる。
どんなときも、誰にでも、教えて、教えられる。子どもだった大人「マルコ」は他人のことを慮り、勇気を持てる大人への階段を上り、「アミーゴス」の面々は「父親」と「仲間」を得る。
「だれもが愛しいチャンピオン」という邦題は素敵ですね。全てが詰まっている。
エンドロールのアミーゴスの面々の格好良さ!彼等の個性と柔軟性、そしてウィットにものすごく影響を受けた。前向きになれた。
難しい問題もたくさんあるけど、楽しいエンタテインメント映画に仕上げてあって、泣けて笑えて考える。素晴らしいエンタテインメントの要素を全て満たした良作だと思いました。

andhyphen