「ハードボイルド西部劇」PROSPECT プロスペクト いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
ハードボイルド西部劇
SFの形を取っているが、開拓時代のアメリカ大陸をメタファーとして描いている作品である。それにしてもスターウォーズのようなレトロフューチャーなセットが堪らなく良い。スイッチのギミックや効果音なども大変繊細に出来ていて、肌感覚の船内活動を感じさせる。だからこそそのホラー感やスリルを効果的に演出出来ていて大変面白い作りだ。
ストーリー展開自体は、説明不足な部分もあるので飲み込みにくいところはある。親子で採掘?しているあの物体は一体どういうものか、鑑賞前に勉強すべきものなのだろう。ただ、発想自体は奇想天外であり、興味が湧いてくる。植物のような物体が地中に埋まっていて、そこから種?的なものを、まるで母親から胎児を引き摺り出すように引っ張り、へその緒みたいなものを切り離し、くるまっている包皮的なところを上手く裁いて、また中身を取出す。そして幾つかの薬品を手際よく浸すことで、琥珀のような鉱石に似た物質に作り替えると言う工程で正解なのか、うろ覚えでしか記憶できなかった。その物質は相当価値が高いらしく、それを目当てで沢山の金目当てがゴロツキがかの星に訪れていたということらしい。ゴールドラッシュに湧くサンフランシスコの鉱山そのものである。
そんな中で、その採集を生業にしている親と娘の二人が、他の同じようなハンターに襲われるというきっかけである。
あっさりと父親が殺されてしまうのだが、娘があまりそれについて悲観するそぶりをしていないが、だからといって復讐心は強いというちぐはぐさは一体どういう心情なのかは謎である。エモーショナルさを演出として落とし込まなかったのか、それともこういう不条理でバイオレンスな状況下ならば、人間はこういう心の変遷をするのであろうか。その理不尽さは、逆に吊り橋効果、ストックホルム症候群を引き起こし、父親の敵が、バディ同士に変化していく流れは、かなり苦かったが飲み込めた。着陸ポッドが壊れてしまい、星の軌道上にあるステーションに戻れず、劣悪な環境である惑星の生命維持が益々袋小路へと追い込まれて行く中でサバイバルを如何にして成し遂げる、その障害を乗り越えるシーンのパニック要素は充分描かれている。父親を殺した男が、その娘との冒険の中で段々と人間らしさを取り戻す過程も心地よい。まるで取憑かれたような悪人相が、腕を切り落とした時から、不思議と父親代わりの雰囲気を醸し出してくる演技力は素晴らしい。
クライマックスシーンの、あの透明な箱に入っている囚人の意味はよく分らなかったし、もっと効果的に演出できたのではないかと、せっかくの見せ場をみすみすロストしてしまったのは甚だ残念ではあったが、意外性のあるSF作品として非常に興味深く鑑賞できた。