「祝・寿」糸 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
祝・寿
青春メロドラマと勝手に思い込み敬遠していたが糸カップルが結婚の報を受け鑑賞。
ところが赤い糸はもつれにもつれ何度も切れて先が読めない展開、漣(菅田将暉)は故郷に根差すが、葵(小松菜奈)は東京、沖縄、シンガポールと流れて行く・・・。
2時間10分の長尺だが二人の波乱の18年間の時の流れを見事に凝縮、壮大な愛のドラマに仕上がっています。
言わずと知れた中島みゆきさんの名曲「糸」にインスパイアされた歌謡ドラマ、凡人が作ればカラオケバックのベタな当て振りドラマになりがちな題材です、これだけスマホが普及した現代ではもはやすれ違いに気を揉む往年のメロドラマは無理だとも思っていましたが見事に予想を覆されました。
故郷が富良野と言うのも絶妙、倉本聡さんの「北の国から」が生まれたドラマの聖地ですから人生ドラマには似合います。鮭が北海道に戻るようにと言ったら笑われそうですが風に流された赤い糸が戻って来るにも打って付けのような故郷ですね。
企画プロデュースの平野隆さんの眼力でしょうか凄いキャスト、スタッフを集めましたね、演技派の若手からベテランまで綺羅、星の如くです。
瀬々敬久監督はピンク映画から犯罪ドラマまでジャンルを問わない鬼才、人間の陰も陽も知り尽くしていますから人物描写が秀逸、泣かせどころを心得た心憎い演出です。
脚本の林民夫さんも子供向けから硬派な社会派ドラマまで数多く手掛けているのでセリフも光ります、菅田さんの泣きの名演に呼応したのでしょうか「泣いている人がいたら抱いてあげなさい・・」のコンセプトやカラオケシーンの「ファイト」の挿入も痺れました。二人の祝宴を本編でなくエンドロールで見せるのも、シャイな監督の味つけなのでしょう。
そして、まるで地で演じたかのような熱々のご両人、おめでとうございました。