「感動して泣けるからこそ、もっと中島みゆき曲の使い方を拘って欲しかったかなぁ~」糸 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
感動して泣けるからこそ、もっと中島みゆき曲の使い方を拘って欲しかったかなぁ~
中島みゆきさんの名曲のタイトルがそのまま付けられていると言うのは些かあざとい感じがしながらも、中島みゆきさんは好きなのとw、主演が菅田将暉さんと小松菜奈さんと言う役者としてもノリに乗ってる二人ならそんなにハズレはないだろうなぁと思い、観賞しましたw
で、感想はと言うと、割とベタですが、個人的には結構好き。
感動もしましたし、ちょっと泣いた。…いや割と泣いたw
何よりも豪華な出演者でガッチリ固めているからソツが無い。
また大作系の感動作としては上手く纏まっているんではないかなと。
ベタではありますがw
菅田将暉さん演じる蓮と小松菜奈さん演じる葵との二人の平成史を描いていて、時々に接点は生まれるが、互いにそれぞれの別の人生を歩むと言うのは個人的には良い。
もっとガッツリ接している時間が長いかと思ったら、意外とそうではなかった。
その辺りが普通にありそうな感じと時折出てくるドラマチックな描写が良いんでは無いかなと。
特に蓮の人生が濃い。榮倉奈々さん演じる香との死別は物悲しくて、このパートが蓮の人物描写を深めている。
小さい頃はサッカー選手になりたくて、世界中を飛び回りたい!と思っていても、現実はそんな甘くない。早々と夢から挫折し、何処か屈折しながらも、地元で地道に頑張ろうとし、変に大きな屈折を描いてないのが個人的にマル。
蓮の素朴ながらも真面目な性格と香との生活が確りと描かれていて、変に葵との絡みを入れなかったのも良い。
榮倉奈々さんはこの作品の裏MVPな活躍です♪
小松菜奈さん演じる葵も10代前半に結構過酷な生活環境で健気に真面目に頑張っているのが良い♪
母親が付き合っている同棲中の若い男に暴力を振るわれているが、描写では性暴力が無いのが救い。正直そう言う事が裏設定であったにしても、そう言う場面や描写は気持ちが滅入るし腹が立つし嫌い。小松菜奈さんが出演していた「閉鎖病棟 -それぞれの朝-」でも同じ入院患者に襲われるシーンがありましたが、あれもストーリーに深みを加えている必要描写であっても物凄く萎えるんですよね。
東京で頑張りながらも、同棲中の企業家の男性の破産で沖縄に行って、そこからシンガポール、東京、北海道となかなか忙しいw
でも、飛び回る人って側から見ていると節操が無いぐらいに動き回るから、それが葵の頑張りと成功を表しているし、蓮との対比になっていて良いんではないかと。
斎藤工さん演じる、キャバクラで知り合った投資会社の社長の水島なんか良いヤツ♪
この手の作品でありがちの小ズルい小悪党ではなく、ちゃんと葵の事を考えて、自分から身を引いている。
蓮と葵のそれぞれの人生できちんとパートナーとの良い関係が築けていたと言うのは見ていてもなんか安心。
また、脇を固める役者さんも良いんですよね。山本美月さん、倍賞美津子さん、成田凌さん、二階堂ふみさん、高杉真宙さんと豪華。
個人的に気に入ってのは松重豊さんと竹原ピストルさん。同じ場面での共演はしてませんが、缶コーヒーの「BOSS」のcmコンビですよ♪
また、悪い人がそんなにいないのも良い。葵の母親役の山口紗弥加さんが葵に「警察には転んだと言いなさい」と耳元で呟いたのはめっちゃムカついたのと、山本美月さん演じる玲子が会社の金を使い込んで不動産投資して逃げた以外は概ね良い人ばかり。
物語を面白くしようと必要以上に波乱万丈にしなくても良い。それよりも人が真っ直ぐに生きる為に出会う人間ドラマに重きを置く方が観ていても安心して観ていられる。
最近観る作品はこれでもか!とばかりに災難や悲劇がてんこ盛りの作品が多くて、ちょっとここまで多いと萎える。人間普通に生きているだけで辛い事や悲しい事はあるんですから「そんなに悲しい事を入れなくてもええで」と言いたくなります。
難点が有るとすると最初の蓮と葵の出会いで自転車が宙に舞うシーンはちとやり過ぎかなと。
また、蓮が葵につけてもらった絆創膏をそっと机の引き出しに入れるのは…気持ちは分かるけど、端から見てみるとちょっと引くわw
その割にはミサンガはあっさり捨てるしw
友人の成田凌さん演じる竹原の最初の嫁で馬場ふみかさん演じる弓が1年での離婚後にあっさりフェイドアウトしたのは気になるなあw
あと…ちょっと個人的に気になるのは中島みゆきさんの曲の使い方があんまり上手くないかなw
タイトルの「糸」は作中で2回も流すとインパクトに欠けるし、エンドロールの菅田将暉さんと石崎ひゅーいさんの「糸」はちょっと変化球過ぎ。
カラオケで歌われる「ファイト!」が2回歌われるのは良いとしても、葵がシンガポールで銀行に行く前の「時代」の中国語バージョンも悪くはないんだけど、これも変化球。
劇中で使われても良い様な中島みゆきさんの曲は他にも沢山有ると思いますが、個人的にはオリジナルの「時代」を平成から令和に変わる時に流すとか、葵がシンガポールで不味いカツ丼を食べるシーンで流れる曲は「ヘッドライト・テールライト」が流れるか、ここでこそ「ファイト!」を流す方が良いかと。
沖縄の家で水島が出て行った後に家で葵が寝転がるシーンでは「ひとり上手」が流れるとか、水島と車に乗ってるシーンでは「悪女」が流れるとかあれば良いなあ〜と思ったんですが…これでは「夜会」みたいになりますねw
中島みゆきファンの間で言われる、1980年中期の所謂「御乱心の時代」を超えてからの名曲の一つが「糸」な訳ですから、この曲を核としながら、いろんな中島みゆきさんの名曲を盛り込んで欲しかったかなと思うし、劇中で聴きたかったんですよね。
やり過ぎると「夜会」になってしまうんですが、そこはもう少し入れても良かったのではないかなと。
「アザミ嬢のララバイ」や「あしたバーボンハウスで」を入れるのは…やっぱりやり過ぎですねw
昭和は激動な時代でしたが、振り返れば平成も結構な激動な時代だったなぁと思います。
戦争と言うとてつもなく大きな事は無かったにしても、大きな地震が頻繁に起こって、自然災害に関してはかなりあったのではないかと。
令和になった途端にコロナと言う物凄い事が現在進行形で起こっていて、どの時代でもいろんな事が起こっている訳ですが、良い悪いは別にしても「あの時代があったから今がある」と言う思いは変わらないんですよね。
平成を振り返る為の作品ではないんですが、ノリに乗っている二人のドラマとしては見応えはありましたし、また菅田将暉さんも小松菜奈さんも以前に比べて、かなり一皮も剥けた感じがします。
小松菜奈さんは以前の不器用さが薄くなり、女性としても輝きを増し、演技にも艶と丸みが出てきた感じで、菅田将暉さんも落ち着いた感じの演技で良い。
若い頃の荒々しさが抜けてきて、円熟味が増したと言うと極端ですが、良い感じの恋愛感が観ていて頼もしい。
泣けるかと言えば泣けます。感動出来るかと言えば感動出来ます。
いろんな事があった平成の時代に自分の思いをシンクロさせ、そこに実力派の二人と脇の役者陣が周りを固め、中島みゆきさんの名曲が後押しをする。
ある意味鉄壁の布陣過ぎて、面白くないと言えばひねくれ過ぎですがw、ベタな部分があったとしても、そこに素直に乗っかるのも良いのではないかと思いますが如何でしょうか?
話題作なのでかなりの方が観賞されているかと思いますが、個人的にはそんなにハードルを上げてなかったので普通に楽しめました♪
良い作品ですよ。小松菜奈さんと中島みゆきさんの曲が好きな方は是非w