「同じテーマの映画を同時に作ることを認める映画会社の度量にも頭が下がりました。」糸 お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
同じテーマの映画を同時に作ることを認める映画会社の度量にも頭が下がりました。
決して幸せではなかった平成という時代へのレクイエム映画が、ここのところ、立て続けに公開されています。
この作品では、「栄光のド昭和」の歌手である中島みゆきが、大銀行や大証券が立て続けに破綻し、日本中が「貸し剥がし」の恐怖におののき萎縮していた暗黒の時代、すなわち平成10年にシングルCD発売された歌「糸」をモチーフとした作品です。
縦糸はあなた、横糸はわたし。
しかし縦糸一本と横糸一本だけでは、人を暖める布には、なれないのです。
運命の糸などという、たった一本きりの存在を信じられなくなった平成という時代。
縦糸も横糸もグシャグシャに絡み合う作品こそが、時代を象徴するのかもしれません。
小松菜奈は、まるで百面相かと思えるほどに表情が豊かで魅せてくれます。
ねっとりと濃厚な演技力で楽しませてくれる榮倉奈々も、チャラいけど味のある成田凌も、みんな平成風。
そしてみんなモデル出身の俳優なんですよね。
もしかすると、モデルという職業、つまりカメラマンの要求に応じて瞬時に豊かな表情を紡ぎ出しつづけた経験が、名俳優を産むための良きトレーニングの土壌だったのかも知れません。
ストーリーには、いくつもアラがありますが、なんのなんの、最初から最後まで心地よく感動に酔いしれることができる作品なので、細かいところにいちいち目くじら立てていたのでは損でしょう。
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