「独特すぎる作風に馴染めば十分以上に楽しめる作品でした。謎のマカロニ拳法【女装映画鑑賞第5弾】」音楽 野球十兵衛、さんの映画レビュー(感想・評価)
独特すぎる作風に馴染めば十分以上に楽しめる作品でした。謎のマカロニ拳法【女装映画鑑賞第5弾】
この映画ね、ほんっとに独特なの。炸裂するセンスがオリジナル&自由過ぎ。欧米か(古ッ!)
まず絵柄が特徴的すぎるのね。特に目の描写。一度見たら絶対に忘れられなくなるインパクトあるの。
ちょっとした狂気や死の匂いすら覚える描写なの。それ故に中毒性があるみたいな。
“萌え絵”に真っ向からケンカ売ってるスタイルの絵柄なの。
「ジャパニメーション嘗めんな!」みたいな感じ。
そこに馴染めるかそうでないかで評価が大きく変わってくる作品と思うです。
私は割と序盤で馴染めたタイプでした。ああいう絵柄、割と好き。
フライヤー情報では、大橋裕之原作を岩井沢建治監督がほぼ独力で、手描きの絵で7年もの歳月をかけて制作されたそうなのですね。何でもロトスコープという手間のかかる技術を駆使されたそうで。そういう執念が生んだ快(怪)作。
してね、この作品を独自たらしめている最大の要因って“間”だったの。
テレビ番組なら「放送事故じゃね?」って思うくらいに、いちいち間が長いの。無声の空白が多いの。チャー研かよ。
そこ詰めていけば、この映画、三分の一の尺で終っていたっぽいです。
でも、そこ責めちゃだめ。それがこの映画のキモなんだから。
してね、ことごとく予想を裏切ってくるのね。
タイトルが『音楽』なものだから、主役三人が音楽に目覚めて、友情ありーの挫折ありーので、上達していく過程が描かれているのかな?って勝手な解釈をしていた時期が俺にもありました。
ちゃうのね。登場人物・森田が語るように「素晴らしい!これこそがロックの原始衝動なんちゃら(みたいな台詞だったと思うです)」みたいに褒められて、つけ上がって。
主役三人の演奏がデタラメもいいところで、劇中を通して全く上達しないのね。
そもそもベース二人(笑)にドラムだけのバンドって何なん?花形のボーカルもギターも不在なのね(笑)
ただひたすら低音がズンズンズンズン♪ズンズンズンズン♪ズンズンズンズン♪って、どこかの部族の奇祭で流れるような音が延々と続くの。
でも、それがよかったです。バンド名がてきとーに付けた“古武術”とか、いい加減にも程があるの。
対して、同じ学校に“古美術”ってバンドがあったり、このあたり、いい感じでふざけているセンスに、笑っちゃいました。
奇しくも同じ読み“けんじ”のあの大槻ケンヂさん。バンド結成当時の名前は“ドテチンズ”
彼が音楽を志した当時、楽器が演奏できないものだから、健康青竹踏みをちゃかぽこ叩いていたエピソードみたいな。
そう、この映画の一番大切なポイントって、音楽に対する“原始衝動”に突き動かされた三人のバカ者の青春ストーリーだったんですね。
フロイトの説いた「性に特化した方」じゃなくて、ユングが説いた方の「広義の意味」でのリビドーみたいな?(学がないくせに、ちょっと語ってみたかっただけ)
演奏がどーたらこーたらは、どーでもいいの。上手い下手なんてどーでもいいの。
作中序盤での重要なシーンで三人が初めて音を鳴らせた時に「なんかすげー気持ちよかった」みたいに語り合うシーンがあったのですが。
音楽の感動って、そういう根源的な部分が一番大切なんじゃないのかなーなんて、ド素人が語っています。
実際私もエレキギターをギュインギュインに弾いてみたくて。中古を5000円ほどで買って練習したことがあるです。
誰もが一度はやったことがあるはずの『Smoke on the Water』のイントロ弾けただけで満足して止めちゃったの。そこが限界だと悟ったの。でも、デタラメに音出すだけですんげー気持ちいいのね。典型的な熱しやすく冷めやすいタイプの子。それが私。そして研二。
主役・研二が最後に見せた、やる気のなさからの→秘技には驚きました。あれって、血の滲むような努力重ねなきゃできないことじゃん。ってか、天賦の才だったの?あの芸術的とも言える怒涛のリコーダー演奏。
とにかく、その研二の妙技が最後の最後に炸裂するカタルシスに昇華したの。まさしくオーケンを彷彿させるあの歌詞&ボーカル。
あのラストには感動を覚えましたね。
惜しむらくは、主要キャラの紅一点・亜矢のボーカルの出番がなかったこと。
せっかく隠れてボイストレーニングまでやってたのに。是非ともフェスに絡めてほしかったです。
あと、あの竹中直人が声を当てていた大場も、これと言って見せ場がないまま終わちゃったのね。
フェスへの乱入&乱闘シーンも見てみたかったです。
そこで、研二がマカロニ拳法の使い手として恐れられていたことも描いてほしかったかな。終始やる気のない“ぬぼーっと”した感じだったから、何故あんなにも恐れられていたのかが不明だったのね。
でも、美味しいところは、ぜーんぶ研二がかっさらって行ったのね。
そこに至るまでのまさかの路上ベース叩き折り事件。あれ、かなり笑っちゃいました。いきなり、何の脈絡も無しだもん(笑)あれが噂に聞くマカロニ拳法なの?
いい味出してたのは、名脇役の森田。萌え絵に真っ向からケンカ売ってると冒頭に描きましたが、この作品の真のヒロインは亜矢(女)ではなくて、この森田(男)だったんじゃないかな…とさえ思いました。
森田がいちいち可愛いの。私の萌えポントの琴線もかなり独特。オリジナル過ぎ。変態か。
【ここから定期の変態脱線話】
この映画、また女装で観に行ったんですね。女装映画鑑賞も早いもので、もう5回目。
いい加減止めときゃいいのに。
今回はちょいと勝手が違いました。女装鑑賞でいつもお世話になっている名画座さん。
まず、モギリのおねいさんが、いつもの人じゃなくて初見の女性。
そして何よりもこのたびは集客に恵まれていて。
そこそこ多くのお客さんいらしてたの。
私の左側席ふたつ開けて二人組の女子。後方には、一男一女の子供連れの家族。
もうね、慣れない状況にテンぱっちゃったの。まさに周章狼狽ってやつです。
何しろこちとら、どこからどー見てもオッサン丸出しの女装崩れ。
いつもは、もっと空いているのになー。そのつもりで観に行ったのになー。
私の鑑賞スタイルこそフロイトの説いた「リビドー」なのかな?
かなりこじらせまくっていますよね。
まだ止めるつもりはないですけれどね。もうしばらく続けさせて。
させて。